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精神の氷点

精神の氷点

精神の氷点

作家
大西巨人
出版社
みすず書房
発売日
2001-01-01
ISBN
9784622045304
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精神の氷点 / 感想・レビュー

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neputa

先の大戦前後を舞台に己を捉え続けるエゴと現実との狭間で凄まじい葛藤を見せつける男の物語。 「水村」という青年は全ての意味を否定することだけを証明しなければならないとする。そんな人間が人間らしい温度を保つことは不可能であり、彼の精神はある一点に向かいだんだんと冷えていく。最終的に彼が下した決断は裁きであり、辿り着いた地点が本書のタイトル「精神の氷点」と重なる。読後のいま、悲劇を通り越した虚無感しか無い。 実際に暗く重苦しい時代を生きた者の独白のような、もしかすれば私小説ではないかとも感じる作品であった。

2015/04/21

鷹図

民族の流血と国土の潰滅という社会の問題も、思想と肉体および精神と実践の合一の阻害という個人の問題も、すべては非人間存在の「あいつ」のせい…。という半ば逆恨み的な論理のもと、主人公は凶行を決意する。責任の所在を明確にするような文体に、「明晰な狂気」を感じる。それは事の正否を別にしても、ニヒリズムの正しい姿である。ところで冒頭の、出兵中の主人公が残した「木箱20個ほどの本」を、隣近所の人たちに嘲笑われながらも懸命に避難・確保しようとした母の一挿話は、全読書人落涙の、大変身につまされるエピソードであった。

2011/01/20

ゼロ投資大学

〈魂と虚無〉の相克の迫真的なドラマに引き込まれる。

2024/06/05

すみす

終戦直後の作品。戦前の混沌とした状況下で不貞を犯し、戦争で死にきれなかった男およびその男に巻き込まれた女の精神を深く描き出した小説。男女の関係について、今の時代にここまで純粋に考えることはあるのだろうかと懐かしさを覚えた。またこの書に出てくる殺人はいわゆる無差別殺人で、現代では連日報道されるような事件だが、当時はおそらく報じられることは少なく、あるいは報じられなかったために、現代においてこういった考えられないような殺人事件が増えているように言われるのだろう。当時と現代の風俗思想の違いを感じられ良かった。

2023/10/07

eazy

暗い「我の固執」に押し潰され暗鬱の日々に追い詰められた青年・水村は、一縷の血路を「社会」ないし「社会人(としての自己)」の否定に求める。日本が開戦へと突き進む中、流血を強行している非合理的・非人間的存在の「あいつ」を憎悪しつつも、自らの徴兵を予感する彼は、おのれの黒い精神と肉体との一致を狂い求めて身の回りの女たちを貶め、遂に出征前夜、凶行に走る・・。独特の文体は、狂気の論理を弁護すると同時にその欺瞞を自嘲する感じ。

2010/01/29

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