フラッシュ: 或る伝記
フラッシュ: 或る伝記 / 感想・レビュー
yumiha
単なる犬好きではなく「むしろ犬になりたいと思う」ヴァージニア・ウルフによって書かれた本書を、少し前に読んだ『犬身』(松浦理英子)によって知った。あのウルフが?と意外な気もしたが、解説によればヴィタからコッカー・スパニエルを贈られて飼っていたそうだ。本書の主人公(主犬公?)フラッシュもコッカー・スパニエル。19世紀の女流詩人エリザベス・バレット・ブラウニングの手紙も含めて、その波乱の犬生を描く。犬の嗅覚・視覚による当時のイギリスそしてイタリアの情景が興味深い。また、姉のヴァネッサによる挿絵もふむふむだった。
2024/01/20
ぱせり
最初はさっぱり見えなかったものが、闇に目が慣れるにしたがって、ぼんやりと輪郭が見えてくるような感じの伝記。何しろ、犬の目を通して描かれているのだから。エリザベスの伝記、と考えるよりも、愛犬フラッシュそのものの一生に興味を持った私には、フラッシュの中にエリザベスがいる、と思うことで彼女を感じていた。
2014/11/29
ムチコ
面白かった。ヴァージニア・ウルフって〈意識の流れ〉でしょ? と気構える必要なし。コッカースパニエル犬フラッシュの伝記という(それだけで興味を惹かれる)体裁で、飼い主である詩人エリザベス・バレットの人生を描き、「役割」を求められない犬と当時の女性が置かれた状況を対比する。比較的裕福なバレット家、ミッドフォート家のある農村部、フラッシュが連れ去られるスラム的街区、と階層が異なる様子も、他の小説や映画での描写と思い合わせながら読んだ。
2019/07/05
Mana
イギリスの女性詩人エリザベス・バレットの愛犬フラッシュを描いた伝記。題材は面白いんだけど、どうも読みにくい。ウルフはダロウェイ夫人は好きなんだけど、それ以外が今のところ合わないんだよね。みすず書房が読みにくいのかも。
2019/11/21
tona
イギリスを代表する女性詩人であるエリザベス・バレットの人生を飼い犬、フラッシュの視点から描いた伝記。「伝記作家は芸術家ではなく、職人である」と言ったウルフらしく、事実に基づきながらも、犬に視点を固定し手紙を用いるなどしてバレットとブラウニングの恋愛模様を描いてみせている。病弱な時の詩人バレットを愛しながらも、犬という立場からただブラウニングに奪われるしかないフラッシュという犬描写が功を奏し、伝記というジャンルでありながらも飽きがこない内容になっている。
2013/09/25
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