自分だけの部屋 【新装版】
自分だけの部屋 【新装版】 / 感想・レビュー
harass
1920年代に英国の女子大の文芸サークルでの講演原稿をまとめたもの。本文約170ページ。女性が知的活動を行うには、自由に使える年500ポンドと、鍵のついた部屋が必要だと、ウルフは主張する。フェミニズム(女権拡張論)批評のはしりのエッセイだと身構えて読みだすが、実に楽しめた。回りくどい言い回し、謙虚と皮肉と辛辣さが絶妙に入り交じる文章になんどか噴き出してしまった。女学生向けの女性文化人としての歴史や経験と心構えを易しく率直に語っている。多分に引用したい箇所が多い。実におすすめ。
2016/04/21
ケイトKATE
ヴァージニア・ウルフについて、20世紀を代表する作家としての認識はあったものの、作品を少しだけしか読んでいなかった。最近、女性作家による社会問題の著作で、ウルフが取り上げられることがあり本書を読むと、ウルフは誰よりも女性の社会問題について深く洞察し、未来を見つめていたことに驚かされた。本書でウルフは、女性を所有物として支配する男性への容赦ない批判だけでなく、女性にも無知にならず向上心を持ち続けるよう𠮟咤激励している。男性である私は、ウルフから「男らしさ」に囚われてはいけないことを理解し肝に銘じたい。
2020/05/27
H
オースティンとブロンテとの比較にウルフの洞察力のすごみを感じる。文学を読むこと・書くことにはかならず労働の問題が絡んでくる。お金、そして誠実さなしでは文学は成立しない、という絶対的な事柄について掘り下げている。すべての文学は誠実さの変化例なのかもしれず、いくら財産を持っているか、という状況も同じように差異をうむのかもしれない、と思ったりした。また時間をかけて読み返したい。
2015/10/04
真夜
「女性が小説なり詩なりを書こうとするなら、年に500ポンドの収入とドアに鍵のかかる部屋を持つ必要がある」ウルフ精神的自由と経済的自由は分かちがたく結び付いている。経済的従属が必ずしも精神的従属を意味しないとして、けれど、書くための時間やペンや、紙の何帖かを工面するだけの権利も女にはなかったのだ。向田邦子が受賞したとき匿名の男性作家から抗議の電話を受けたエピソードなど思い出しつつ、現代において「女が書く」とはどういうことだろうか、という最近の個人的テーマに迫れそうである。
2014/01/22
こひた
薄っぺらい性別分断に流されないようフェミ本道も触れたいなと。イーフー・トゥアンの生活空間と個人意識の歴史展開を読んだばかりで,ウルフの時代に女性の個室(と500ポンド)の重要性を指摘してて流石。女自身から/男から/フィクションの女の在り方が時代(WW1前後)で何が変わり何が残るのか。自然描写も結構細かく文学としても面白い(マン島に短尾猫いるとか)。意識の流れがサロン共有なの知ると第三の男で文学的にアメリカが孤立した田舎扱いなのも理解。男は女を2倍に映す鏡にした(で喪失バイアスを拒絶する)。創造性は両性具有
2022/11/08
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