最後の詩集
最後の詩集 / 感想・レビュー
いつでも母さん
嗚呼、本当に最後の詩集になったのだなぁ。One dayが好き。そして、エッセイも良い・・深いなぁ。一字一句が染みるなぁ。今頃はあちらの世界で奥様に会っているのだろうな。そして、外界の私達を笑っているかもしれない。『よき人生なんて、もともととりとめもない、ささやかな、お気に入りの人生にすぎないのではないだろうか。』よき人生か・・
2015/12/12
ふう
初めて長田氏の詩を読んだのは、何かつかまるものがほしい、支えてくれるものがほしいと、ただ立ちすくんでいるときでした。深い森の奥から、はるかな空の遠くから、まっすぐ静かに届けられる言葉にどれだけ救われたことか。最後、というタイトルが重くてなかなか読めずにいたのですが、ちゃんとお礼を言わなくてはとゆっくり読みました。もう死を意識していたのでしょうか。詩と向き合い、詩と歩いてきた道のりをかみしめるかのような言葉たちが綴られていました。その言葉を今度はつかまるためではなく、隣をいっしょに歩くように胸に刻みます。
2018/03/25
lonesome
エッセイの「探すこと」にある「ゆき当たりばったり、偶然の幸運を手に入れるまで、勘を当てに、何を探しているかわからずに探す」という一文が本当にその通り、長田弘さんに言われると改めてその楽しさに確信が増してくる。そこに探しても見つからない片方の靴下の話で人間という生き物の虚しくも愛すべき姿を対比して見せるところがなんとも好きだ。
2016/09/30
まさむ♪ね
「詩って、きみは、何だと思う?」詩とは、いつの間にか傍にいて、気づかないうちにさりげなく、ゴールの見えない人生を歩くうえで支えとなってくれるもの。たとえば無限に色を変えてゆくあの青い空のように。たとえば無辺の野にあって驚くほど力強いあの花のように。悲しいけれど、もう二度ときのうの空、きょうの花を見ることはないのだろう。それほど時の流れは残酷だ。でもだからこそ彼らはあんなにも美しい。詩人が気づかせてくれたただひとつの真実。「人に必要となるものはふたつ、/歩くこと、そして詩だ。」
2015/07/21
aika
詩人が、その人生の最後に残した詩集。シチリアやアッシジなどイタリアの各地を舞台に生み出された詩は、どれも死のイメージを帯びています。しかしそれを暗澹なものにしない、数千年の歴史と時空を超えて呼応する詩人の言葉の透徹さ。「生きられた人生の後に、人が遺せるのはきれいな無だけ。時の総てが過ぎ去っても、なおのこる、軽やかでいて濃い空の青だけだ。」毎日見慣れた坂道や家並みの風景も詩であり、平和も、死さえも詩である。生きることは、詩であり、詩は生きることだと、長田さんの最後の詩集は示してくれているように感じました。
2021/01/07
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