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遍歴 (神谷美恵子コレクション)

遍歴 (神谷美恵子コレクション)

遍歴 (神谷美恵子コレクション)

作家
神谷 美恵子
森まゆみ
出版社
みすず書房
発売日
2005-03-25
ISBN
9784622081845
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遍歴 (神谷美恵子コレクション) / 感想・レビュー

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寛生

【図書館】苦境の中にあればあるほど、その葛藤が、生きる勢い、歓喜、愛になり、読み手のこちらが慎重でなければ見逃してしまうだろう彼女の涙の祈りは、彼女でしか書けない文の肌を感じさせる。周りの人間や上司に自身は結婚するつもりはないと明確に断言している事は、当時の女性にしては稀有だろう。何度も病に倒れたり、食糧難にあったり、戦争を経験しても、だからこそ生きていく創造の歓び、爽快感さえ感じさせる。コレットを思い出させる。短いようで永く、その濃厚な生き方は常に他者に向かって開かれていく。

2015/01/20

奥澤啓

元旦に再読。何度読んだことか。中井久夫が神谷美恵子に「時よ止まれ汝は美しい」と書いた文章を読んだことがある。「一隅を照らす」という言葉がある。目立つことを嫌い、類稀な語学の才で翻訳や通訳をし、文章の才で永遠に読み継がれるような文業を残した。神谷美恵子の語学の才には天才を感じる。フランス文学者で世界的なパスカル学者である兄前田陽一をして、「フランス語に関しては美恵子の方が上だ」と言わしめたほどの仏語力。神谷さんの著作と言葉を心の糧にしている人は、そうとういるだろうなと思う。私も一生神谷美恵子を読み続ける。

2015/01/05

Gotoran

精神科医としてハンセン病患者への奉仕に魂を砕き続けた人道主義者、仏語・英語に堪能で仏・ギリシャ等西洋文学を貪欲に探究した学求の徒、家族(父母、夫・子供)を心底愛し続けた娘にして妻であり母親、類まれな才能と実力を有しながらも自己顕示欲がなく目立つことを嫌い自己の至らなさに悩み自己嫌悪に陥った謙虚で控えめな人、ただひたすらに人間をみつめた思索と献身の人。絶版となった本書は、その人、神谷美恵子の自伝的回顧録。枚挙に暇がない気付き・学びに溢れた良書。仏語での思索を可能にした少年期のスイスでの学び、(以下コメへ)

2014/05/10

りさ

神谷美恵子さんの自伝より “本質的ものを、より本質的なものを、と求めてやまぬ心に追いやられて、はるばるここまでやってきた求道者を、神よ、どうかお導きください。どうか本質的なことにのみ私の力の最善を注がせてください。たとえそれが家庭においてであろうと、癩院においてであろうと。” その通りです、と言いたくなる祈りです。

2019/10/23

うろたんし

「ゆるして下さい、癩の人よ 浅く、かろく、生の海の面に浮かびただよい そこはかとなく 神だの霊魂だのと きこえよき言葉あやつる私たちを。」教師として、医師として、見習うところたくさん。本文中、現代ではあり得ないくらい、癩病患者に対して露骨な表現が散見される。でもそれは決して彼らを虐げるものではない。僕たちは遠慮しすぎているのではないか。抗議することの容易くなった今、それに萎縮してしまって、表現の幅が狭められているのではないか。純粋な心をもって発するなら、差別用語も棘を落とすのではないか。

2016/03/06

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