『白鯨』アメリカン・スタディーズ (理想の教室)
『白鯨』アメリカン・スタディーズ (理想の教室) / 感想・レビュー
harass
『白鯨』についての講義。当時(1851年!)の鯨は資源として大切なもので、後の石油や原子力に匹敵するエネルギーであり、鯨のことばかり語っているのだが、それは世界そのものを語っている。また白(善悪を超越した存在)の鯨へのエイハブ船長の狂的な復讐譚でもある。これらの構造はその後のアメリカの繰り返される強引な歴史への射程があり、不滅な古典とみなされていると。当然『重力の虹』のほかに、『幼年期の終わり』『ソラリス』『映画ゴジラ』『紙葉の家』などにも影響があると著者。ただ個人的に少し飛躍があるように感じた本だった。
2016/09/11
あきあかね
多様な解釈を可能とするから、古典は永く人を惹きつける。 『白鯨』は、単なる冒険譚、復讐譚ではなく、アメリカの文学や文化、社会を読み解く鍵となる。小説の中で、「白さ」は高貴な神々しさと、邪悪な禍々しさを持つ両義的な象徴として表される。それは奴隷制を巡る南北問題など、一つの尺度で捉えられない19世紀半ばのアメリカの矛盾を反映しているという。 その他にも、核兵器の恐怖、9·11後の報復と絡めた解釈など、この小説の間口の広さには驚かされる。時代時代の多様な解釈を飲み込んで、白鯨は永遠に巨大になっていくようだ。
2019/02/24
ヨシモト@更新の度にナイスつけるの止めてね
第一次大戦を契機に、「つくる」側にあった鯨が「こわす」手助けをする時代に入るという指摘。どちらにしても、鯨を資源、材料と考えた場合だ。白鯨そしてメルヴィルとアフガニスタンを結ぶラインが見えてきたのも興味深い。西洋の人々にとって拝火教がどういうものなのかというのは、これからも考えてゆきたいと思う。著者による白鯨の訳は、作品を味わうにはもうひとつという印象。ま、ここではテキストがあればいいということで問題ないけれど。
2024/04/29
peeping hole
白鯨バイブスがとにかく上がる。どれほど映画版(なんと30年代にもある)と距離があるのかを鮮やかに語りの中で読ませる巽孝之の授業めちゃくちゃ受けたかった。白鯨読む前に読んだほうがいいです。911を予言していた云々は、この本だけでもなく千石英世のほうが真正面から取り上げている。
2021/03/17
hidehi
『白鯨』って、読んでいてけっこう意味のわからない文とか表面よりもっと込められた意味がありそうだなという文が多いんですよね。実はこの本は再読なのだが、前回はその解明を求めてこの本を手に取ったので、ちょっと内容に満足できないところがあった。 今回改めて読み直してみて、もともとこの本の言っている『白鯨』をアメリカ文学として現代でどういう文脈を持ち得るかというテーマがちょっとわかったように思う。
2021/01/20
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