カミュ『よそもの』きみの友だち (理想の教室)
カミュ『よそもの』きみの友だち (理想の教室) / 感想・レビュー
harass
中高校生向け講義形式の「異邦人」解説書。著者による抜粋訳付き。作品の構成や個々のシーンや言葉遣いなど使われている小説技法や、カミュの生い立ちと舞台のアルジェなどの背景も簡潔に解説。より深い読書の力になる情報ばかりだ。作品自体が謎に満ちていて著者は推察を凝らしてばかりでもどかしくもあるが誠実さを感じた。「異邦人」の初版が1942年であることに、いまさらだが個人的に驚いた。そんなに古い作品であることとちょうどナチの占領下のときに世に出たことに驚く。約160ページで易しく読みやすいのに内容は充実している良書。
2014/09/26
おたま
『よそもの』というのは『異邦人』のこと。カミュ『異邦人』について、テキストに即して解説したもの。『異邦人』は古風だし、格調が高すぎる。原題の感じを生かすと『よそもの』の方が適しているのでは、というのが野崎さんの提案。「太陽のせい」という言葉の意味するところは?何故ムルソーは死刑と決まったのか?最後でムルソーが激高したのは何故?そして、『よそもの』を書いたのはいったい誰か?等々、読者が『異邦人』を読んだ時に感じるだろう疑問に、丁寧に答えようとしている。若干飛躍が感じられるところもあるが、大変スリリングだ。
2020/09/05
テツ
カミュの『異邦人』についての解説本。原題のL'Étrangerを訳すのならタイトルにあるように『よそもの』の方がしっくりくるんだそうな。不条理小説だという先入観とムルソーが告白した殺人の動機が有名すぎて、雰囲気先行で読まれてしまいがちな物語だけれど、太陽の意味、光の意味、最後のムルソーの激昂など、一読しただけではほとんど掴めない細部について詳しく丁寧に説明されていて、本編を読み返したくなりますね。著者の方のリスペクトと深い愛も頁の間から零れ落ちそうなくらいですし、この方に新しく全編翻訳して欲しいな。
2022/05/30
とうゆ
「異邦人」のムルソーという人物を掘り下げている。後半は著者の想像がいきすぎていたいたきらいはあったが、カミュとアルジェの関係性や小説の技巧的な話など初めて知ることが多々有り、読んで良かったと思えた。
2014/06/16
踊る猫
『異邦人』として親しまれて来た、つまり何処かそれこそ「よそよそしい」印象を与えるタイトルを『よそもの』とより忠実に訳しそれを読み解くという試み。ダイジェスト版の新訳にさほど驚きはなく(むろん、読みやすい訳だが)、それよりも野崎歓氏の読解の方に注意を惹きつけられてしまった。『よそもの』はあれ自体でもかなり分かりやすい小説だと思って読んだのだが、「光」が重要な要素として登場することや数の減少など、ほどほどに(イヤミに聞こえないことを祈るが)あくまで書かれたテクストに忠実に則ってクリティックする姿勢に好感を抱く
2016/11/29
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