ユング 夢分析論
ユング 夢分析論 / 感想・レビュー
ドン•マルロー
主だった夢に関する6編の論文を収録。それぞれ発表された年月に隔たりがある為だろう。夢や心に対する見解にも微妙なズレがあり、それ自体、ユングの精神史と読むことも可能である。ことにフロイトの夢理論との決別を誓った後と前とでは、そのベクトルがまるで違うのだ。夢を読み解く本でありながら人間ユングを読み解く本でもあるといえるのではなかろうか。集合的無意識や補償といった概念をもちだし、夢分析に更なる可能性と解釈の幅をもたらしたユングの功績は偉大である。しかしその発見は夢の領域に更なる暗闇を認めることでもあるであろう。
2017/01/22
roughfractus02
著者の初期から晩年までの夢に関する論文を収録した本書だが、意識と無意識の補償システムとしての心という考えから夢を両者を跨ぐ象徴表現と捉え、患者の行動の未来を示すメッセージとして補償的に解読する分析手順は一貫しているように感じる。また、患者と継続的に対話することで、分析過程に分析医も加わり、患者の夢の創造性を内側から触発する場面も出てくる。興味深いのは、著者が度々言及する少女の12の夢への言及である。現実をベースとした夢を超える宇宙等を舞台とした非現実的な夢の場合、集合的無意識と元型のメッセージと解される。
2021/06/18
arekcey
これは名著。神話、シャーマニズム、象徴、死んだ神、無意識にまつわる哲学書として読める。フロイトと仲違いした心理学のお医者さんくらいにしか認識していなかったが立派な哲学者であった事を知る。
2019/11/16
林克也
おもしろかったけれど、難しかった。三分の一、いや五分の一ぐらいしか理解できなかったと思います。いろいろとナイフを突き立てられるような気付きを与えてもらえました。例えばこれ。「人は自分自身ではその責任を引き受けていない過ちのことで、敵を非難するものなのだ。人はあらゆることを他者の中に見る。他者を批判し、非難する。他者を改善させようと、そして教育しようとすることさえある」この部分、まるで自分のことを言われているようだった。
2016/09/30
CP_CP_JA
ユングの夢に関する主要論文6編。久々に再読。今回は年代順に読み直したが、ユングの夢に対する考え方、特にフロイトの考え方との類似点から、独自の視点へと発展していく様が整理される。夢を意識の補償と捉え、かつ夢に対して真摯に取り組む姿勢が学べる。夢を理解できないのは、我々の知識が乏しいだけなのだ。
2022/03/30
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