エミリ・ディキンスン家のネズミ【新装版】
エミリ・ディキンスン家のネズミ【新装版】 / 感想・レビュー
アナーキー靴下
読みたい本登録しながらそこまで期待していなかった、という失礼な心構え、完全に良い意味で裏切られた! 詩を配した物語って、詩がメインで物語は詩を繋ぐため程度のなおざりなもの、とか、物語は良いけれど詩が唐突に出てくることでテンポが悪い、等々ありがちな気がして、本書もそんな感じかも、と想像していた。とんでもない、これはエミリ・ディキンスンの詩を楽しむための、素晴らしい物語だった。白ネズミのエマラインはエミリの分身のようでありながら、詩に触れる読者にとっても分身のような存在。詩を読むとき、その人も詩人になるのだ。
2023/04/11
mii22.
「わたしは誰でもない!ーあなたもー誰でもないーのね?」誰でもない二人の目には名声や将来をずっと気にする世間の人はどのように映っていたのだろうか。言葉や感覚で通じ合うエミリと白ネズミのエマラインの詩のやり取りに言葉のもつ大きな力を思い知らされた。生涯をほぼ生まれ育った家とその庭の中だけで過ごし詩を紡いだ実在の詩人エミリの感性は身近なものや自然を慈しむ気持ちが他の誰よりも強かったところから生まれたのだと思う。本のなかに流れる澄んだ空気のなかに言葉の豊かさ優しさ力強さがあふれ、ぐいぐい胸に迫ってくる。
2020/10/11
ネギっ子gen
孤高の詩人・エミリ・ディキンスンへのリスペクトに満ちた書。シンプルな線の挿絵がステキで、訳も素晴らしい。岩波文庫の対訳詩集を手に、ゆったりと読み進めた――。白ネズミのエマラインがエミリの部屋の壁穴に越してきて、ふたり(?)の密やかな“文通”が始まる――。「私は誰でもない!――あなたは誰?」とエミリ。エマラインは、詩を書き、返事にした。驚いたことに、それはエミリに新たなインスピレーションを与える。誰にも会わず、何処へも出かけないこの詩人に――。疑問が。この本を図書館では、どのコーナーに置くのだろうか―― ⇒
2021/08/24
aika
わあ、と声に出したくなる程可愛らしい表紙で始まる、ディキンスン家を舞台に小さな白ネズミのエマラインとエミリが織り成す詩のやりとり。実際のエミリの生活を忠実に描きながらも、エマラインを交流させることで、孤高の人として思い描いていた詩人が、温度をもつ確かに生きていたひとりの女性として感じられました。希望には、羽がある。長田さんの翻訳は、ディキンスンの言葉が持つ力強さと真摯さをまっすぐに表現してあり、胸を打ちます。もっと彼女の詩を長田さんの翻訳で読みたい。そんな叶うことのない望みが芽生えて、切なさが薫りました。
2022/09/16
花林糖
図書館本。19世紀の詩人エミリ・ディキンスンの部屋に住み着いたネズミのエマライン。前の住人(ネズミ)の残したメモ書きを切っ掛けに二人の密やかな手紙のやり取りが始まります。ネズミのエマラインが可愛くて◎。本当にこの様なやり取りをしていたかの様なお話。クレア・A・ヴェラの絵が雰囲気良く素敵です。
2023/07/01
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