ノーザン・ライツ
ノーザン・ライツ / 感想・レビュー
アン
カナダ、マニトバ州北部の荒野で暮らす少年ノア。先住民のクリー族、郵便機や都市と交信する無線、ラジオを通して届く小説の朗読や音楽、雪上での一輪車のサーカス。彼は思わぬ事故の報せを聞き、胸は引き裂かれますが…。喪失感に襲われる親友の家族や村の人々の悲しみ。不在を繰り返す父への蟠り。心乱す母への想い。離れて暮らす従妹とノアの手紙のやり取りは、募る恋しさが切なく愛しさに溢れ忘れ難い印象を。後半、舞台はトロントの映画館に移りドラマチックな展開へ。儚く光るメランコリックなノアの瞳。クイルの星降る夜へ想いを馳せて。
2021/01/04
白玉あずき
少年の自己形成、甘酸っぱい成長物語は大好物です。前半の北の大地での孤立した生活、後半のトロント編。やっぱり前半が圧倒的に好み。家族を振り回した挙句失踪する父親、孤立に耐える母親と従妹といった部分は読んでいてつらいが、小さな集落の濃い人間関係や、世界各地から吹き寄せられてきた人々の文化の違いを超えた助け合い、人間的共感が素晴らしい。もちろん親友の死に対する哀惜の情、喪失を抱えながら生きていくことの辛さにじーんと。ラジオやフロート付きの軽飛行機が命綱の最果ての地。ちょっとだけ憧れたが、永住はやはり無理か。
2021/01/28
あさうみ
読んでる時間が、とても心地よかった!ひとは誰しも悲しみや孤独を背負っている。小さな田舎と大都市で、過去を思いながら現在を生きる。悲しみで絡まった心をほぐすような、温かさ、ユーモア。あと、無性に郷愁の意にかられます 。読んだ後もじわじわ余韻を残す。家族はどうなったのかな、もっと寄り添っていたい、ずっと読んでいたい…
2020/10/21
たま
読メで知った本。前半は、先住民と北欧系やフランス系カナダ人が混住する集落(北緯58度)の暮しが、少年ノアの目を通してユーモアと節度をもって綴られる。外界との交流は郵便機、無線通信、短波放送だけ。後半ノアは、母と従妹と共にトロントに移住し映画館の経営に乗り出す。1960年とあって『ニューシネマパラダイス』を思わせる映画館の夢を私も一緒に応援した。大都会で狩猟する先住民一家が助っ人に現れたり、短波で聞いていた名作朗読の声と出会う場面も楽しい。厳しい環境で生きる人々の賢さとやさしさが心に残る爽やかな作品である。
2021/04/15
ヘラジカ
穏やかな小説だけれど、孤独感や友情というものをとても美しく描き出している。みすず書房から出版される数少ない小説は傑作が多いということを再確認した。(値段も値段なので)悩んだが手にとって良かった。
2020/10/21
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