闇冥 山岳ミステリ・アンソロジー (ヤマケイ文庫)
闇冥 山岳ミステリ・アンソロジー (ヤマケイ文庫) / 感想・レビュー
パトラッシュ
どこまでも美しく聳え立つ山の圧倒的な雄姿に比べ、そこへ登って征服した気でいる人間は何と卑小な存在か。明るい登山道から間違えて暗い悪の道へ踏み込んでしまった人には、とりわけ落差がくっきりと浮かび上がる。そんな山岳を舞台としたミステリを集めた1冊には、単独で読むよりも強く胸に迫ってくる。集中で松本清張と新田次郎作品は既読だが、加藤薫と森村誠一と併読することで人の暗い情念と殺意が冬山の嵐のように読者を揺さぶる。どれだけ完全犯罪を成し遂げたと思っても、神聖さを汚された山は決して許さないのが共通のテーマかと感じた。
2024/10/15
モルク
松本清張、新田次郎、加藤薫、森村誠一の大御所四人による山岳ミステリーアンソロジー。さすがでした。山岳それも遭難を扱っておりその筆力は圧倒的。実際にその場にいるような臨場感。加藤氏は初読みだったが魅せられた。選者の馳星周氏の極限状態を描くのにこれほど適した舞台装置はない。荒れ狂う自然のなか心の奥の深い闇を描いた作品というコンセプトに最適な4編。時代が古いがそれを感じさせぬほど圧倒され魅了された。
2024/01/13
キムチ
4点掲載。何れも山行の情景、息遣いが伝わってくる。新田氏のモノは異色な捻りの効いた佳作。北アルプスのソロは止めた事もあって淋しさもあって食いつく想いで読み終えた。いい思い出だけで終えるのは理想。しかし、山はそれを安易には許さない・・なんて心が凍ったのが正直なところ。男女関係の拗れを山行に刷り込ませる作品は他にも多いけれど『小説』の題材にはうってつけだなと皮肉めいて・・まさに闇/冥 加藤さん、お初だが壮絶な吹雪とラッセル、天を突く岩壁のシーンがリアル感たっぷり。森村氏作も短編の中に起承転結が収まりぞっと来る
2022/10/24
まるほ
「山男には悪人はいない」この定説に真っ向から挑んだ“山岳ミステリー”。馳星周氏が4編を選ぶ。▼“登山”という極限状況を舞台に、その状況下での人間の“闇”をこれでもかと描写する。おもしろくないはずがない。どの話も緊張感がスゴい。▼松本清張の『遭難』は、遭難時の描写とともに、心理描写を実に迫真に描く。そして唖然とさせられる結末。最後の一文もよく考えると実に意味深。▼新田次郎の『錆びたピッケル』はなんともやるせない結末。他の2編も読みごたえあり。一気に読了してしまいました。▼これは自信を持って“お勧め”です。
2019/06/11
ぽろん
闇冥とは、言い得て妙。探偵気取りで犯罪を暴いてもハッピーエンドになるとは限らない。誰も見ていないと思っても、完全犯罪とはいかない。さすが大御所作者様方。面白かったです。
2019/04/20
感想・レビューをもっと見る