時を呼ぶ声
時を呼ぶ声 / 感想・レビュー
冬薔薇
富山に疎開して終戦を迎えた久世少年は、焼け跡の匂いとあの夏の底抜けの青空を原風景として終生逃げることができなかった。物語はいつもそこから始まる。映画と読書の少年時代、教師も戸惑う歴史の授業。個人には目覚めたが見失った国の誇り、祖国という言葉に罪悪感をもつのはもうやめよう、と言った戦後50年。懐かしくも切ない昭和。「時が経つということは(あのころ)に酔うということであると同時に(あのころ)を悔やむことなのだ」。あの時代の少年が生き生きとよみがえる。
2016/05/20
ジョバンニ
昭和10年代は私にとって知り得もしない時代です。それなのに久世さんの秀でた文章のためか、なぜか懐かしくて泣きたくなるような既視感を覚えます。そして日本人として生まれてきた事に感謝したくなる。久世さんの作品を読むと、いつもそう思う。
2013/12/01
コウジ
これで久世さんの本は6冊目を読了。本書は、筆者自身の生い立ちから、出版当時までの自分の位置をもう1度振り返って再確認する様な内容となっています。昭和という時代に対する甘い記憶であったり、述べられて居るように、筆者自身がその時代を「夏」と評するように。昭和天皇に対する思い入れや、戦争に対する物の見方、登山に熱中した青春時代、「夭折」という言葉に対する淡い憧憬など、久世さんのセクシーな文体でとても楽しく読めました。勿論、文学に対する情熱も織り込まれていて、「やっぱり久世さんは天才だ!」と思わざるを得ません。
2012/05/17
もひ
昭和が夏なら平成はどんな季節だっただろう。令和は?
2019/09/25
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