ペンキや
ペンキや / 感想・レビュー
masa@レビューお休み中
このペンキ屋の人生を見ていると、人生ってはじめから決められていて電車のレールのように外れて進むということすら許されていないような気持ちになってしまう。絵の凄みと同じように、この物語の凄さ、強烈さにひるんでしまう自分がいた。彼と同じ人生だとしたら…死ぬとき「しあわせだった」って言えるのだろうか?あぁ、そうか。気づくことがなければしあわせなのかもしれない。気づくことさえなければ…。
2016/03/01
naoっぴ
梨木さんによる不思議なお話。何色ともいえない微妙な色合いの絵が、ペンキの色の物語に深みを感じさせて読後にほっとため息。あの不思議な女の人が望んだユトリロの白。たくさんの色が混じりあったような白とは、しんやの人生の色だったのか。悲しいこと辛いこと楽しいこと嬉しいこと、みんな含んだ白色だったのだろうか。独特な絵柄がとてもいい雰囲気。
2017/01/29
mocha
依頼者の心を見つめて誠実に仕事をするペンキやさんは、色で人の心を癒す。それはもう技術ではなく魔法。職人さんの中には、実はそんな魔法使いがたくさんいるのかもしれない。たとえ世に知られずとも、愛する家族にはその証が見える。作者の梨木香歩さんも、画家の出久根育さんも、きっと魔法使いだ。
2015/08/17
AKIKO-WILL
絵本みたいに薄い本ですが、梨木香歩さんの文と出久根さんの絵に引き込まれていきます。ペンキやのしんやがフランスで亡くなった父親の墓を探しに行きながら、ペンキやとして成長する姿。ユトリロの白とは?船で出会ったあの女性の正体は。最後に少しゾクゾクした感じでしたが良かった。
2016/03/20
芽生
あらゆる気持ちを丁寧に織り込んだような濃密な色使いと穏やかな語りが、ただただ静かに胸に迫る。まるで1ページ1ページに魔法がかかっているよう。喜び、寂しさ、懐かしさ──人生のあらゆる感情に、ふっと溶け込んでいくような色との出会いは、消化できないでいた感情を「味わう」時間をくれる。故郷パリの街並みを描いた画家ユトリロの人生に思いを馳せ、孤独と哀愁を漆喰とともに混ぜ込んだ彼の「白」を味わいたくなる。命を全うしたとき、この人生はどんな色に染まっているのだろう。この絵本の表紙のように、少しくすんだ、優しい色がいい。
2017/03/10
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