ワニ: ジャングルの憂鬱 草原の無関心
ワニ: ジャングルの憂鬱 草原の無関心 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
絵本だが、梨木香歩さんの文体からは、どう見ても子供向きに書かれたものとは思えない。ルビもあったり無かったりな上に、「斬新」や「存在」などの観念的な漢語も使われている。もっとも、テーマは理解できる子供もいるだろう。その反対に、すっかり困惑してしまう子供もいそうだが。「ジャングルの憂鬱」、「草原の無関心」という二分法による構成は、それこそ斬新。出久根育の絵は、その緑の横溢がちょっぴりルソーを想わせる(ジャングル)素敵な絵だ。絶妙のコンビネーションだろう。この二人の織りなす世界は美しくも、またクールでもある。
2014/11/08
KAZOO
お気に入りさんの感想を読んでぜひ読もうと思ったら絶版になっているのですね。図書館にもなかったので、amazonで購入しました。文が梨木香歩さん、絵が出久根育さんという素晴らしい組み合わせなのですが、どうも話が残酷過ぎるのでしょうか?絵もアンリ・ルソーを思い出させる感じですばらしい色彩感です。やはり大人向けの絵本なのかもしれません。
2018/06/17
mocha
ワニ、やなヤツだなぁ。こんな人いそうだ。いや、ワニみたいな考え方の国もありそうだ。ワニが横暴でも、カメレオンが正論をぶっても、草原のみんなは無関心。自分に危険が降りかからない限りはね。出久根育さんのジャングルの絵は、濃い緑の匂いがしそうだし、大草原はのほほんと脳天気。深読みが止まらないシュールな絵本。
2016/02/12
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
アンリ・ルソーの絵を思わせるジャングルを我が物顔に闊歩するワニ。眠たげな表情で草原に佇むライオン。シンプルに〈ある日の野生の風景〉と読むのが正解なのかもしれないけど、いろんな読み方もできそうです。食物連鎖のルールに粛々と従って生きている動物たちの中で、唯一〈何者〉かになろうとしたワニ。ライオンと対等であろうとする姿は、まるでドン・キホーテみたいだったけど、とても〈人間的〉な生き方だったのかも。「世の中には、自分と、自分でないものがいるだけなんだ」。たぶん、この点ではワニとライオンは気が合ったのだろうな。
2015/03/16
p.ntsk
仲間という存在を認めず世界は自分と自分ではないものであると主張するワニ。弱肉強食の野性の論理。それを自ら体現するかのようなシュールなオチ。いい悪いではなくこれがジャングルの日常とでもいわんばかりの俯瞰で眺めるラストシーンが印象的でした。なかなか哲学的で深さを感じる内容。人間の世界にあてはめるとどうなのだろうと考えてしまいます。アンリ・ルソーを思わせるような出久根さんの絵もよかったです。
2020/02/04
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