兎の眼 (フォア文庫 C 55)
兎の眼 (フォア文庫 C 55) / 感想・レビュー
machi
塵芥処理所に住む子供達と、気概ある先生達の交流を中心に描いた物語。鉄三を仲間外れにしない皆が優しい。子供の考えや真意を汲み取ろうと努力する先生も優しい。「エエカッコ」しようなんて思ってないのがまたすごい。綺麗すぎるかもしれないけど、これだけ腰を据えて向き合ってくれる、見守ってくれる大人がいたら、子供は頑張れるだろうし伸びるだろうな。良い循環。時代は違っても学ぶところが多く、心が洗われる温かい話だった。
2017/09/12
絵美
太陽の子を おもいだしたので、こちらも。 いまであれば 鉄三のようなこどもが おなじ教室にいることに反対する親も、きっと いるんだろうと思います。 歯が痛くなるほど考えて 必死でいてくれる先生達には、自分が学校に通っている頃には出逢えたし 特殊な家庭にいたわたしは ほんとうに救われたけれど、 いま この小説の世界のように教育することを許された先生達は どのくらいいるんだろう…
ぶきちゃん
私が読書好きになったきっかけの本。初めて読んだ時は小学生だったけれど、久々に手にしてみると小谷先生の年を上回っていて驚きました。大人になって読み返して見ると、小谷先生の成長ぶりが心に沁みます。新卒でここまで生徒に向き合える先生はいないんじゃないかと。しかしこの本はただの教師の奮闘記ではない。児童書として扱われるのは勿体ない。大人も子供も得るものが絶対ある、そう断言できる本です。
2016/06/23
もりもり
大学を出たばかりの箱入り娘新人教師小谷先生が、困難にぶつかりながら(いっぱい泣きながら)教師として人間として成長していく。ゴミ処理場に住む難しい児童たちと心を通わせようと何度も足を運んでは傷ついたり、知的障害の女の子を学級であずかっては周囲の大人から批判を得たり。また、自分の家族からは「お嫁さん」である自分の仕事への理解が得られず苦しむ主人公。問題は全ては解決しないまま本編は終わり、これからも困難と喜びが繰り返されていくことが、なんとなく伝わってきます。
2012/10/23
toshiyk
昔からタイトルが気になっていたので。児童文学の名作だが、読んでみると、子供を教える先生、子供の周りにいる大人に対して語りかけているように思える。ゴミ処理場に暮らし、1年生なのに言葉をほとんど話せず、「タダで飼えるペット」であるハエを可愛がるばかりの鉄三と、担任の新米先生が主人公。背景にあるのは、忌避施設、非正規雇用、発達障害児童の教育、といった、古くて新しい問題です。先生が鉄三のハエ趣味にとことん付き合うことが、鉄三の持つ可能性を拓くだけでなく、ゴミ処理場の住人への冷たい視線を変えることにつながっていく。
2017/03/08
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