少女神第9号
少女神第9号 / 感想・レビュー
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西欧美術を考えるに、例えば磁器製品。一分の隙もなく白く塗られ、精巧で緻密な装飾。極められた人工美。美術という言葉はこういう物にこそあるという威厳。しかし、一旦ヒビが入ってしまったらもう美しくないのですか? モヒカン・髪染め・ロック・パンク・サーフィン・スケボー・サングラス・リップスティック・ゲイ・レズビアン・セックス・飲酒・喫煙・レイプ・ドラッグ・・・ これらはメッセージではないのだろうか。 彼らはわずかな瑕疵で足場を失い二度と這い上がれない奈落と隣り合わせのストレスに晒されている。【少女神♯9】
2013/11/13
ヴェネツィア
90年代のSFやLA(一部はNYも)の陽光あふれる街。そこでは個々の地名はリアリティにあふれ、展開する個性的なファッションもキラキラと輝いている。しかし、彼らにもわかっている。それは一瞬の煌めきなのだと。美は、その崩落性ゆえにこそ美しい。ドラッグでの死、プロムの後の別れ。光の裏側に影があってこそ輝けるのだ。影を描くのは「マンハッタンのドラゴン」だ。タックの祖父母はおそらくヨーロッパから逃れてきたユダヤ系移民だろう。ベーグルの香の向こうからはヴァイオリンの「サンライズサンセット」の響きが聴こえてくる。
2013/03/19
藤月はな(灯れ松明の火)
読友さん達の感想で絶賛されていたので読んでみたらセンシティヴ且つエッジの利いた話ばかりでガツンとやられました。時代が変わってもキラキラしているが故に時には人を傷つける「あの頃」について甘やかだけど透徹として語られた短編集。『Blue』での先生の口添えがあったからこその屈辱と内心、馬鹿にする同級生に対する引け目は似たような時期を経験していたのでヒリヒリとした。特に好きなのは『Dragons is Manhattan』、『Winnie and Cubby』。
2013/11/05
兎乃
漂白された真っ白の紙に ピンク・臙脂・灰紫...クルクルと色が変化していくその様はそのまま少女なのです。もし、あなたが(実年齢に関係なく)女の子で、この本をまだ読んでいなかったら、今すぐ読もう。もしあなたが男の子だったら(これも実年齢に関係なく)、カッコよく小馬鹿にしながら「なんだよ、チャラチャラした本だよなっ」と言いつつ、図書館の裏庭や どこか人目につかないところで読んでね。がっくりと膝をついて「なんで僕は女の子じゃないんだぁ」と悔しがってください。本気で1号~8号を探した日が懐かしい永遠の少女より。
2013/03/17
明智紫苑
以前、図書館で借りて読んだ本を古本で買って再読。アメリカのティーンエイジャー文化を描くこの短編集を一言で言えば「カラフル」。色についての描写にリアリティを感じるのね。日本や中国などのエキゾチックネタもいい具合にスパイスになっている。「児童文学」というには危ない要素が少なからずあるし、「ライトノベル」というには明らかに日本のそれとは違う。「ヤングアダルト」というカテゴリーは今の日本では死語だよね?
2018/08/02
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