遥かよりくる飛行船 (ファンタジーの冒険)
遥かよりくる飛行船 (ファンタジーの冒険) / 感想・レビュー
mocha
未来の話だけど、どこか懐かしいSFファンタジーロマンス。ニューヨークのキャリアウーマン、アイルランドの古さびた協会、空には飛行船…。そういう80年代頃の映画のシーンをコラージュしたような架空世界。井辻さんは翻訳家の仕事が多いからか、翻訳物を読んでいるようだった。不思議な世界観で面白かったけど、なかなか読み進められなかったのはなぜだろう。ネヴィルの正体が私には最後までつかまえきれずもやもや。見た目はクロコダイルダンディ風かな?
2019/07/14
二藍
SFっぽい雰囲気を漂わせつつ、ファンタジーのような幻想要素や浮遊感も持ち合わせ、地球の記憶の果てにある古代へ思いを馳せる、というなんとも独特な物語。神出鬼没な飛行船の紹介からはじまり、象や鳥の化石をひそませる会社のビル、炎をまとうゼラニウム、霧の向こうの故郷、などなど惹きつけられる言葉に溢れている。現実感にとぼしいので読んでいくのはすこし大変な部分もあったけど、面白かった。すぐそばに現れてくれた飛行船が視界から消えられるように、主人公が黙って目をつむるヴェランダのシーンがとても美しくて好き。
2014/01/30
kana
井辻朱美さんといえば、私の中では大好きなメリングの『妖精王の月』シリーズの翻訳家という印象が強いのですが実はこんな素敵な話をかいていたなんて…!!私はすっかりリーデンブロックの語り口に酔ってしまい本を読んでふと顔をあげたこの世界が違うものに見えてきました。この本を読んでいる間だけ、時間軸の少しずれた場所にいるような気がしました。渦巻きの中にいるような。この世界にはたくさんの記憶がつまっている。 滅び行く生物の記憶。人々の喜びも悲しみも。 知ってしまったらもう後戻りはできないのです。
2004/08/26
いえろう
不思議な世界に入り込んだような物語。こういう世界観大好きです。プリオシン市、ゆがんだ地層、ひっそりと植わるゼラニウム。なんだか宇宙にいるような感じがする。銀河通信亭のアラビアン・モカを味わってみたいなぁ。
2014/10/21
ぽて子
何度読んでも胸がときめく作品だけど、この電波的恋愛ストーリーのどこに惹かれているのかよく分からない。どことなく未来の異国っぽい感じがいいのかも?主人公の感じた虚無感、今はいいけど年齢を重ねるにつれて身内が一人ずつ亡くなっていく、けれど自分は彼らの為に何もしない、次(の世代)を残さないかもしれない、よくわからない仕組みでお金を手に入れて、よく分からない仕組みで作られた服や食べ物を買って、ペラペラの人生を生きる…そういう焦りみたいなのにすごく共感を覚えた。
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