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狐笛のかなた

狐笛のかなた

狐笛のかなた

作家
上橋菜穂子
出版社
理論社
発売日
2003-11-01
ISBN
9784652077344
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狐笛のかなた / 感想・レビュー

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ちはや@灯れ松明の火

秋の夕暮れ、風渡るススキ野、束の間重なった少女と子狐の運命の糸。ぬくもりを肌で知ってしまえばもう、冷たい闇の中には溶け込めない。傍には居られない、ただ遠くから見つめているだけの淡く強い思い。けれど血の色をした権力者の妬みや欲望は撚り合わさって憎悪の鎖となり人をも霊狐をも国ごと絡め取る。恨みを吸い禍々しい毒を吐き出す呪者に、生命を縛られても大切な者を護ろうとするため牙を剥く霊狐。一途な心が凍てつく暗闇に灯す狐火はやがて眩い陽の光へと変わる。咲き零れる桜、舞い散る春の野、重なる笑みの愛おしさ。

2010/07/24

ぶち

(再読) 上橋菜穂子さんの作品の中で私が一番好きな作品です。この物語よりも清く、美しく、淡く、それでいて強く、そして自然と涙が出てきてしまうファンタジーはないのではないかと思ってしまうほどです。 豊かな自然と美しい風景、人間同士や人間と人間ではない者との間の愛の在り方。それを語る温かい文章。静かに私の心に沁み込んできます。 桜を見る度に、野火と小夜、そして二人の間に生まれた男の子が三人で駆け回る情景が浮かんできて、思わずいつまでもその幸せが続くことを願ってしまいます。

2019/10/23

ヒロ@いつも心に太陽を!

脳裏に浮かぶのはどこか懐かしく美しい野山の情景。 恨み、呪い、出生の秘密、他人にはない力。自分の命をかえりみずにただただまっすぐ、互いを強く思い合う野火と小夜の姿に胸がきゅうっとなった。(特に野火の一途さ!)呪いの結末は最悪の事態を覚悟しながら読んでいたので、満開の桜の下の場面は心底嬉しくて泣きそうだった。なんて幸せそうな!想像するだけで胸が暖かい気持ちになる。人であることも霊狐であることも越えて魂と魂がひかれあった二人。姿はどうであれ今小夜と野火が幸せであることに間違いはない。(続)

2010/11/03

nyanco

領地争いを発端とする隣接した国の争い…。土地を返してあげればよいのに…と呟く小夜の純粋さが心に染みた。今も世界中の何処かで続く戦争、解決はそんな単純なことなのかもしれない。でも、それまでに殺された罪もない人々は…?そしてその家族の想いは…?止むことのない負の連鎖…、望まない運命に巻き込まれていく小夜、野火、小春丸…。舞台設定、キャラクターの良さでグイグイと物語に引き込まれる。「あわい」ででしか遂げられなかった二人の想い…、彼女達の行く末を心配していた私には嬉しいラストでした。

2010/05/16

とろこ

野火の想いが、健気過ぎて、感情移入しながら読んだ。情景が自然と思い浮かぶような表現、読みやすい文章。和風ファンタジーとも呼べそうな世界観だけれど、遠い昔の日本で、実際に、こうしたことがあったかも、と思う。生まれた時に定められた運命。それを切り拓く力が、野火にも小夜にもあった。物語の流れから、もっと悲しいラストになるかと想像したけれど、こういう結末なら、もしかしたら幸せなのかもしれない、と感じた。児童書のくくりだけれど、大人が読んでも楽しめる一冊。面白かった。

2018/10/20

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