ベルリン1919
ベルリン1919 / 感想・レビュー
ケイ
ほぼ100年。この年は、これまでは第一次大戦の終戦の時としての記憶だったが、スペイン風邪がまず頭に浮かんでしまう、このコロナ禍のいま。ドイツのこの時期のことは、まったく知らなかったのだと読みながら痛感した。英仏との戦争に喘ぐ民。水兵の反乱で賽は投げられた。その後の分裂、内戦。きっとそんな状態が続いた後のヒトラーの言葉は、響いたのだろうと思った。表紙や中に挟れた写真がとても雄弁だ。彼らの表情が語りかけてくる。ヤングアダルト向けとは思えないほどの内容。
2020/06/06
鷺@みんさー
児童書だが大人にも非常に読みごたえのある三部作。ある一族のその時代ごとの子どもの目を通して、ベルリンにおける重要な年代の姿をつぶさに描く。表紙の写真と相まって実際に彼らが存在したかに思える。1919ではドイツがなぜ、ヒトラーを支持する道に進んだのか、その下地を「大人が子供に説明する」形で丁寧に描かれる。労働者の立場から見た共産党やヒトラーの姿は、私が教科書で知るナチスの一面的なイメージとはまた違った、複合的な感慨をもたらしてくれた。
はやしま
1918年11月から1919年1月の冬のドイツ、人々の記憶から影をひそめてしまっている敗戦後の混乱期、食料もろくにない中、国を立て直そうと必死に生きる人々が描かれた作品。利発で活動的な少年ヘレの眼を通して、彼が通う学校、議論が交わされる家の様子、意見を異にする皇帝派の家族の友達との関係、ストを始めた水兵たち、使いを頼まれて歩き回るベルリンの街やデモや鎮圧する軍隊の様子、都会と対照的に食料が豊富な田舎の様子など(ヘレ自身の淡い初恋も)織り込まれて当時のベルリンの様子が浮かび上がる。この設定が上手いと思う。
2020/06/17
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
1919年、ドイツのベルリンに住む13歳の少年ヘレとその家族の話。第一次世界大戦が終わり皇帝が追われた「忘れられたドイツ」の年。ヘレとその家族はひどく貧しい暮らしをしている。寒い冬に足りない燃料に少しの食べ物。子供たちは皆飢えて病気。それでも分かれて争う労働者の政治的動きに敏感に興味を持つヘレ達。次は1933年。あのヒトラーが出てくる。ヘレとその家族はどうなるのかな。
2020/06/15
かもめ通信
原題は『Die rotten Matrosen oder Ein vergessener Winter』(「赤い水兵あるいはある忘れられた冬」)。13歳になったばかりの少年ヘレの目を通して描かれる物語は、邦題にあるとおり、1918年から1919年にかけてのベルリンが舞台です。困難な時代に急いで大人になる必要があった少年の物語であり、深く結びついた一家の物語である。時代を生きた人々の群像劇であり、大きな時代のうねりを真摯に見つめた物語でもあると同時に今を考える物語でもありました。
2014/12/08
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