ベルリン1945
ベルリン1945 / 感想・レビュー
ケイ
1933年にいた思いがけぬ人達が去っており、しかし生き残った人達もいて、再会が嬉しかった。特にハイナー。生き残った中で写真家になったあの人が撮ったら、ここに何枚かある子供たちの写真になるのだろう。廃墟と化したベルリンで、重い荷物を背負う子供たちの背中の小ささ。踏みしめる足は、どんなだっただろう。1919年に立ち上がり、ドイツ国内で共産党員として戦った人達に対する冷たい視線が今もあり、それを払拭したかったのだという作者の想いが伝わる。だって、終戦後に一番絶望したのは彼らだろうから。常に公平でありたいと思う。
2020/06/11
鷺@みんさー
三部作完結編。敗戦のベルリンで人々が街中でどんどん死んでいく。そこにはただ、「市井のドイツ人」の戦争への恐怖や痛ましさがあるだけだ。非常に大作だったと思う。物語自体は長いが、ある一族をずっと追いかけ、子どもの目を通して読む形なので読み易い。ナチスを恐怖として想像するだけでなく、いちドイツ人の立場からあの戦争を見る、という意味でオススメの作品。
シュシュ
12歳の少女エンネの目線で1945年のドイツ・ベルリンが描かれている。「貧困から抜け出したかったんだ」という元ナチ党員の言葉が何度か出てきた。言い訳のようだが、本当のことなのだろうと思う。「いい暮らしがしたかったんだ」と。そして、戦後、ベルリンには、ソ連兵が入ってきて、元ナチ党員を捕まえていく。ナチがソ連兵に変わっただけで、結局独裁政治は続いていくように見えた。それでも、エンネとエンネの家族は希望を持とうとする。瓦礫の街に凧をあげようと言って、エンネのお父さんか作ったピンクの凧が象徴的。
2016/07/21
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
陥落時のベルリンに暮らす貧しいゲープハルト一家の話。生まれた時からずっと食糧不足の中で育った13歳の少女エンネが主人公。ナチス党の下でビクビク暮らすベルリン市民の様子が良くわかる。密告者がはびこるさまも戦時下の日本と同じ。敗戦後はソビエト軍に蹂躙される辛い日々。ナチスの思想統制からスターリンの思想統制が始まる。全く同じ無精神を強いられる市民。「知らなかった」のは有罪である、と作中の人は語る。アウシュビッツなども「知らなかった」為に罰を受けるベルリン市民。政府が何をしてるか何をしないか知るのは義務である。
2020/08/03
kocka
再読。祖父母に育てられたエンネ、ベルリン1919の主人公ヘレの娘である。1919の頃からずっと空腹と貧困と政治闘争、弾圧の生活を強いられてきた一家。無残な形で人生の終わりを強いられた人々のなんと多いことか。人とはなんて残酷なことが出来てしまうのか、本当に考えさせられる。著者が児童書として書いた理由も分かる、感性が豊かなうちに読んでほしい本だ。
2015/11/05
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