詩画集 プラテーロとわたし
詩画集 プラテーロとわたし / 感想・レビュー
ケロリーヌ@ベルばら同盟
たとえば慈雨。アンダルシアのだいだい色の土に優しく暖かく降り注ぐ銀色の雫。たとえば旋風。暑く灼かれた草木を薙ぎほこり臭いひなたの匂いを巻き上げる俊敏な脚。たとえば夜空。喜び哀しみ思い出が星々のようにきらめく黒水晶の瞳。ふわふわした毛並を指でそっと梳いて、逞しい首に腕をからめて、とがった耳に囁かせて、わたしの秘密を。眠れぬ夜の懺悔を。遠くに行ってしまった愛しい人への伝言を。苦楽が交互する山坂をとぼとぼ歩く。掌に蝶を包み、松葉の爽やかな、アイリスの甘い香りを嗅ぎ、小鳥の唄に導かれ。見えない道連れを心に抱いて。
2019/12/09
帽子を編みます
詩画集です、散文詩28篇に見開きで美しい銅版画、ゆったりした気分で眺めます。ペールオレンジが基調となり、やさしい朝陽、暮れる夕日のイメージです。好きな絵は35頁のヒメネスを乗せたプラテーロ、「戻り道」〜彼(プラテーロ)は私の体になりきっていた 忘れるほどに〜、手に黄色いアイリス、暮れて夜になり、物思い、とけこむ二人。好きな詩「道端の花」〜この花の命はほんの数日だ〜でもその記憶は残る永遠に〜。絵の効果なのでしょうか、淡い色合い、花の香りがやさしくとりまいているように感じました。
2022/03/18
よこたん
“「プラテーロ わが友よ」土に呼びかけた。きっとお前はいま天の牧場で いとけない天使たちを ふんわりとしたお前の綿毛の背中に乗せているだろう。お前はわたしを忘れただろうか? プラテーロ 覚えているかい? わたしを?” プラテーロ3冊目。山本容子さんの銅版画が素晴らしく、私が思い描いていたロバそのものだった。座高が低いからかちょっと上目遣いで、やわやわとした体つきで、オシリが可愛らしくて。暖かなベージュがかったオレンジ色の世界に包まれる。お別れが来ることを知って読んでいるのに、やっぱり涙。とてもよかった。
2022/04/20
Shoko
図書館本。すごく素敵な詩画集だった。プラテーロの黒く煌めく水晶のような瞳。静かな愛くるしい仕草に胸がときめいた。物悲しさもはらみながら、輝くばかりの自然の美しさを讃える、幸福に満ちた美しい言葉を飲むうちに、身体の中に何かキラキラしたものが満ちてくるよう。山本容子さんの絵もぴったり合っていて、素敵でした。クリスマスプレゼントに手元に欲しくなりました。
2019/12/22
Pー
スペインの首都マドリードで健康を害したノーベル賞作家ヒメネスが生まれ故郷の町アンダルシアに帰り読書と瞑想と詩作に没頭した時の作品。ヒメネスが銀色のやわらかい毛並みのロバ「プラテーロ」に優しく語りかける138編の詩集から選びだした28編の散文詩に銅板画家の山本容子さんが浮かべたイメージを描いた銅版画と共にした一冊のこの本。詩人ヒメネスとロバのプラテーロとの優しさに満ちた詩集、胸に響くロバへの愛情描かれています。お昼のひと時珈琲を淹れてしっかり愉しませていただきました。
2020/12/20
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