動物園から未来を変える―ニューヨーク・ブロンクス動物園の展示デザイン
動物園から未来を変える―ニューヨーク・ブロンクス動物園の展示デザイン / 感想・レビュー
yyrn
福沢諭吉がZoological Parkを「動物園」と訳したばかりに「学」が抜けて?飼育と展示が中心の日本に対して、欧米ではかなり早い段階から野生動物の「種の方舟」としての役割が与えられ、生息地に近い環境で繁殖させたり、さらには生息地を保全する動きなど、生態学的なアプローチから発展してきたことがこの本の冒頭で紹介されている。そんな欧米型動物園の手本とされるニューヨークのブロンクス動物園の運営に20年以上も関わっている日本人に園内を案内されながら、世界の動物園の取り巻く現状を教えてくれる本だった。
2019/10/31
Sato
ただ動物を見せて終わりではなく、メッセージを伝えなければ。世界の動物園のお手本とされるニューヨークのブロンクス動物園。その革新的な展示の数々は本田公夫という日本人が牽引している。「動物園に来た人の首根っこを掴んで自然の側に放り投げるような仕事がしたい」来園者の行動や意識を変えていくアメリカの動物園で活躍する日本人のルポ。アニマルライツの観点からも動物園の存在意義がこれまで以上に問われている。世界の約半数が都市生活者である今日、動物園は都市生活者が感覚的・身体的に自然に触れる体験を提供しなければいけない。
2019/04/24
まこ
本書の例はブロンクス動物園だが、なぜこの動物を飼育するのか等を、パネルや展示物の置き方一つにまでこだわり伝えようとする。他分野でのプレゼンにも応用できるヒントが詰まって、動物園の紹介の枠を超えた本。ブロンクス動物園のやり方はそのまま日本で使える訳ではないけど、そこから日本独自の問題を考えることは出来る。動物園は動物の研究も大事な役目だからね。
2022/05/03
つー
日本の動物園では「飼育」に比して軽視されがちな「展示」を通し、動物園が担う役割について掘り下げている。世界の動物園を牽引してきたブロンクス動物園の考え抜かれた展示にまず驚嘆し、同園で長年活躍する本田さんの、更に上を行く高い視座に再度驚嘆する。環境教育を施すことで自然保護活動を促そうとする理念に対し、それでは不十分としてソーシャル・マーケティングを取入れ、人々の価値観ごと創造しようとする近年の試み紹介等も大変興味深かった。動物園を通してヒトを動かし、未来を変えようとする意気込みが伝わってくる、かなりの良著。
2020/06/19
家の中のぱっぽ
動物園・水族館に就職希望する人は是非一読することをお勧めします。 近年、動物園施設に就職希望で臨んでくる多くがアミューズメントや己の欲求をただ満たすために来ている感が否めませんでした。 言わば、珍しい生き物に触れ合えれば良し、飼育員になるのが夢、という感じです。 それはそれでいいのですが、この本では生き物にとっての本質的な部分や人間との関わりや将来の持続可能な社会を構築する上で必要な示唆を与えてくれます。 生き物たちと真の意味でガチで付き合っていくような人にオススメです。
2020/03/24
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