『国家とはなにか』
『国家とはなにか』 / 感想・レビュー
白義
日本国内で出た国家論として、最高水準の本。どんな国家が正しいか、間違っているかという価値判断を一切抜きにして、国家はどういうメカニズムで動き、どう生まれどう形成していくかを純粋に考察した、最もクールでリアルな国家論。萱野さんは国家を、正統性と合法性を持った暴力の主体、つまり一番強くて大きくてみんなからそこそこ受け入れられたやくざのようなものだと捉えている。この単純な規定から権力、暴力、富、ヘゲモニー、ナショナリズムと各種概念を切れ味鋭く解読し一貫した流れで構成する手腕は目を見張るものがある
2011/11/03
またの名
フランス現代思想を専門にしつつ「未だおフランスに幻惑されている日本論壇」を非難したりとなかなかトリッキーな言論を展開している、人気若手論者の硬派な理論書。従来の左翼やポストモダンな表象文化論がテキトーにテンプレで批判してきた国家について根本から考察し直し、暴力の独占と富の我有化のプロセスによって説明する論述も、現代思想(つまり左翼やポスモダ)御用達のベンヤミン、フーコー、シュミット、スピノザ、アルチュセール、ドゥルーズ&ガタリといった難解な思想を援用しているのに非常に明快。実は相当トリッキーで奇抜な芸当。
2015/05/22
もJTB
議論内容は常に国家と暴力との関係について語っている。でも手法としては、今後も人文知に触れる意志のある人がおいおいつまづく事になるような現象を先回りして教える本としても書かれている。だからこの本を読んだら読む前よりもアレントやベンヤミンを混乱せず読めるように、ドゥルーズの言葉廻しが分かるように、フーコーのコンセプトを追えるようになっている。この、手法と内容で別の事を実践してるのに本としては一つになってるスタイルがまさにフランス現代思想ゆずりだなーと思う。
2013/04/13
politics
暴力を通じた権力の実践と、権力を通じた暴力の実践の複合体として国家を定義し、あくまで「暴力装置」という観点で考察された国家論。ウェーバーからフーコー、ドゥルーズ=ガタリなどフランス現代思想まで駆使して考察されていて大変示唆に富む。中間部に位置する章では、国家=国民国家の陥穽を批判し、一般的な国家と国民国家の違いを説いていく部分は現代でも有益だと感じる。哲学的考察で成された国家論としては今なお大変重要であることは間違いないので、国家について興味ある方には必読である。
2021/08/29
takao
ふむ
2024/03/10
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