負債論 貨幣と暴力の5000年
負債論 貨幣と暴力の5000年 / 感想・レビュー
KAZOO
読んでみて、経済史的な側面よりも分明しあるいは社会史の分野に入る本ではないかと思われました。ブローデルの「地中海」を思わせる感じもしました。負債に対する考え方もあるのですがそれを現在の世界各国の違いなどの対応方法などを分析してくれてもいいのではないかとも思ったりしていました。面白い視点からの分析ではあると思います。
2017/05/10
きゃれら
経済学、貨幣論の現在地を知りたいつもりで挑んだが、そこが全く抜けたマクニール「世界史」、ダイアモンド「銃・病原菌・鉄」を埋める歴史読書ともなった。アダム・スミス、マルクス、ケインズ、モース、ニーチェを取り上げ、ひっくり返していく鮮やかな語り。現代の世界の流れも俯瞰してみせてくれる。中国がアメリカの債権をたくさん買うのは、周辺国を服従させてきた古代からの伝統的施策というのは、目からうろこ。もっと広く読まれるべき本だと思うので、気軽な新書がでないものか。新書で短くこの本の魅力を伝えるのは難しいだろうけど。
2021/08/20
34
ローンにがんじからめにされた現代のプロレタリアートは、債権者に対してメフィストフェレス的な悪のイメージを懐きながらも、「借りたものは返さなければならない」というモラリティに忠実なままでいる。このモラル上の混乱が、わたしたちの集団的想像力に限界を課しているとしたら……。著者の発想はニーチェの系譜学の発想に似てなくもない。しかしニーチェが無知であった領域、むしろその無知を武器とした領域は、著者にとって専門分野である。文化人類学の知見をもとに、近代のモラルと経済学の諸前提に切り込む著者の筆致は見事。
2017/02/15
アーサー
初読。1時間◆目次とあとがき、訳者あとがきを読んだ。グレーバー本2冊目◆著者は人類学者。2020年逝去◆「借りたお金は返さねばならない」のはなぜか。5000年を振り返る。本書での試みは「次代の展望を提示するのではなく、(中略)時代にふさわしい大きな尺度と規模で思考を開始するとはどういうことか、問いかけはじめること」という◆長大な本。『独学大全』と同サイズ。読み切れる自信ない。馴染みの薄い分野の博覧強記の人による著書は、読むのが大変。
2022/05/20
roughfractus02
著者をアナキストの人類学者に固定し、経済学史の文脈で本書を読むと、過去の資本に関する議論に照らして荒さがしする経済学者たちの標的になるかもしれない。が、現代の電子マネーを実務で扱う貨幣論者たち(F・マーティン、K・セガール)が経済学的貨幣論に信用創造の操作と債務の隠蔽を見出すのと同様、メソポタミア以来の5000年の貨幣の人類史を記す本書が貨幣を負債において捉える点は注目に値する。本書は貨幣ありきの交換の歴史でなく、貨幣の形が力の不均衡から生じ、サイバーな現在にその相貌を露わにする点を示唆するように思える。
2018/07/11
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