官僚制のユートピア テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則
官僚制のユートピア テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則 / 感想・レビュー
まると
官僚制が閉塞感と安心感を併存させて世の中を覆っている状況を鋭く分析した、刺激的な論考でした。「官僚制の魅力の背後にひそむものは、究極的にはプレイへの恐怖である」。規制緩和とは名ばかりで、私たちの社会はますます規則や文書でがんじがらめになっている。私たちが享受している自由とは、そんな規則に取り囲まれた中でのゲームに過ぎない。にもかかわらず、官僚制を敵視するはずの左翼すらも、そのゲームを喜んで受け入れていると著者は言う。次著「ブルシットジョブ」が大変刺激的だったので手に取ったが、期待を裏切らない面白さでした。
2022/06/26
34
原著の副題にある「官僚制の秘かな愉しみ」は取っ払わないでほしかった。この本は見方によっては、人類学者がもっとも身近なものに視線を向けるとどう見えるのかという本である。人類学者ならではの視線で官僚制を眺めるといっても、意外なほどハリウッド映画やファンタジー小説を対象にした批評めいた箇所がおもしろい。それもそのはずで、これはフレドリック・ジェイムスンがいうところの「政治的無意識」についての本でもあるのだ。もっとも近しいものがもっとも遠い、とはハイデガーの言葉だったか、著者は身近なものの遠ざけ方がうまい。
2018/05/06
無重力蜜柑
『ブルシット・ジョブ』や『負債論』で有名なアナーキスト人類学者の評論集。想像力を窒息させる規則と規制が、規制緩和を掲げる新自由主義によってむしろ増大して見えるパラドクス(リベラリズムの鉄則)を、経済学から歴史、民話、サブカルチャーまで色々取り上げつつ縦横無尽に論じる。ユーモアに満ちた軽快な文章で非常に読みやすいものの、右翼/左翼といったイデオロギー的な語彙が極めてアメリカ・ローカルな使われ方をしているので、そのまま日本に当てはめると的を外すところはある。とはいえ、示唆的で読む価値のある本だ。
2023/05/20
月をみるもの
アナキストの人類学者が描く官僚制への異常な愛情、もしくは「いかにして我々人類は、暴力によって強制される規則を愛するようになったか?」
2020/10/29
やましん
「ブルシットジョブ」「貨幣論」に続いて著者の本は3冊目だが、毎回結論はなんとなく分かった気になれてもそこに至るまでの説明で躓いてしまう。なぜ技術が進歩しても人々の暮らしは、その進歩に見合うだけ改善しないのか。その原因の1つを官僚制に代表される社会機構から説明を試みている。さらにこの本が面白いのは、では一体なぜ人は官僚制から決別することが出来ないのか、その理由に踏み込んでいることである。それは、人間がもつ創造的自由(プレイ)への恐怖であるらしい。そうかもしれないな、とも思ったが人に説明するのは中々難しい。
2022/04/17
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