パウル・ツェラン詩集 (双書・20世紀の詩人 5)
パウル・ツェラン詩集 (双書・20世紀の詩人 5) / 感想・レビュー
ruki5894
ここがぼくらが追いすがった者らの憩う場所ー/かれらは時刻を数えまい、/雪片を数えまい、/川の流れを堰まで辿るまい。/かれらは世界にはなればなれに立っている。/ それぞれがそれぞれの夜のもとに、/それぞれがそれぞれの死のもとに。/無愛想に、頭には何も被らず、遠近の霜を頂いて。(夜ごとゆがむ より)
2020/12/16
H
不条理な状況下で失くした人びとを悼むためにならぶ、不合理でうつくしい言葉たち。侵略下でみた残虐で非現実的な景色が、悪夢や白昼夢になり反復運動する。生きているものも亡くなったものも境界を失い、不均衡なかたちでふたたび邂逅する。理不尽な暴力を、忘却することは不可能だ。だとしたら、せめて反復のなかで自らの方向を見定めるしかないのかもしれない。それこそが、暴力にさらされたひとの負う軛、ひとつの方位磁針であると知りながら。「黒いミルクをのむ」詩が印象てき。
2015/10/29
瀬希瑞 世季子
再読。「迫奏」が泣ける
2023/03/10
bookends
詩を読んであんまり単純に「綺麗だと思いました」とか「美しかったです」とか言っちゃいけないのかしらと思うものの、ページを開いてまずはっとさせられたのは言葉の美しさだった。どこか日常から遊離した、透明で生活感のない言葉。イメージ喚起力の高い言葉が空中に結ぶ映像、そこから溢れる、存在しなかった故郷への郷愁に似た光。黙読していても唇が動いてしまうような音楽性。しかしそれらが深く心に突き刺さるのは死の影のゆえだと思う。また、「言葉」という語が繰り返し現れ、そのたびに私にとっての切実な部分がぎゅっと掴まれる。
2012/06/19
桜井晴也
「あけがたの黒いミルク/僕らはそれを夕方に飲む/僕らはそれを昼に朝に飲む/僕らはそれを夜中に飲む/僕らは飲む/そして飲む/僕らは宙に墓を掘る/そこなら寝るのに狭くない」
2010/01/21
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