マンガ学への挑戦―進化する批評地図 NTT出版ライブラリーレゾナント003
マンガ学への挑戦―進化する批評地図 NTT出版ライブラリーレゾナント003 / 感想・レビュー
阿部義彦
マンガ夜話でお馴染みの漱石の孫、夏目房之介さんの漫画評論試論の様なものです。導入として、マンガ夜話の「いしかわじゅん」像の流通と言う題で、番組の「面白さ」を分かりやすく特徴づけた事で1席打ぶちます。この番組は生放送で台本が無いので、人さえ集めればひたすら写して時間になれば止めるので低予算で済むのでコスパが良いのです、ゲストの選び方が肝要で如何にその本に夢中になっている人を持ってくるかにかかってます。そこで揉まれた夏目さんの進化する批評論実に興味深く読ませて貰いました。やはりつげ義春は避けて通れません。
2023/01/06
Arowana
読者、作家、批評家という三者を経験した著者が今までを振り返り、実存と客観の両視点から作品(テクスト)、主体(送り手・受け手)、社会(構造)、歴史(系譜・文化比較)などについて真面目に語った本。これは漫画に限られた問題ではなく、そこを出発点にしながらも本質的な内容なので決して矮小な身内話に収まる本ではないと思う。他にもBSマンガ夜話やマンガ産業、スタッフ内の実情、著作権の話があり、特に作家本人(ちばてつや、つげ義春)の作品やコメントをもとにした作家の無意識、表現意識の考察はとても深く、ぐっと引き寄せられた。
2013/03/24
猫森
(本文P.46より)いわば批評は読者・受け手としての自己表現なのであると。(本文P.182より)米沢は〈語られた物語と、読み取られた物語は、必ずしも同一のものではない。〉し、〈あなたにとってのマンガは、僕にとってのマンガではないのだから……。〉としながら、しかし〈マンガの物語を読み取ることとは、実は自らの中の物語を読むことである。〉 二次創作の原動力、いやモチベーションというか心理を解き明かしているような一文。
2016/09/13
酔花
「マンガ学」について、歴史的・文化的・社会学的側面など、多角的な視点を用いてそれぞれ触れられており、包括的にこの問題を眺めるには向いていると思う。ただ、自分は最後までよんでみて、じゃあ結局「マンガ学」ってなんなのよという疑問に回帰してしまった。あとがきで著者が述べているように『マンガの深読み、大人読み』を読めば、もっとイメージがつかめるのかもしれない。
2011/05/10
tktn
内容とあんまり関係ないが、72ページの『あしたのジョー』からの抜粋はたしかにすごい。そこまでの話の流れを全く知らない僕にも、力石徹が死んだことの重みが伝わってきた。死者を光源として描く、というかなり特殊な手法を使いつつ、部屋全体を冷静な俯瞰視点が見下ろしている。この組み合わせによって、力石が光を放っている、という主観的なものの見え方が相殺(?)されている、という気がする。
2012/12/14
感想・レビューをもっと見る