覇道の槍
覇道の槍 / 感想・レビュー
onasu
信長の上洛より一世代前の京畿での旗の奪い合い。 細川管領家も割れて相争う中、真の実力者は守護代、更に被官へと移っていくが、細川京兆家が守護の阿波では、先代が京で敗れた三好元長が、主筋の足利義維、細川晴元と共に再起を伺っていた。 三人は新しい秩序を打ち立てることを誓い合い、将軍義晴を擁する細川高国の陣営に調略を掛けて泉州堺に上陸、京畿の支配を目論むが、元長の突出を阻まんとする畿内の諸勢力により、脆くも瓦解してしまう。 未知の興亡は読む手が止まらないし、そこから出てきたあの人の絡ませ方もおもしろい。
2019/06/25
maito/まいと
近年の作品がどれもツボものばかりの天野さん、今回も夢幻の戦国カタルシス作品、マニアックにも程がある三好元長を題材にした、秩序回復と新たな権威創出の物語。史実を上手く取り入れ、夢の尊さと儚さが柔らかく心に響いてくる名作(堺公方府が指令書を発行していたのは史実で、幕府より行政府として機能していたのではないか、と近年注目されていたはず)あのカオスな権力構図と権謀術数を程よいバランスで活き活きと描いており、ラストの余韻もまた玄妙。そして元長の‘後継者’たちの史実への伏線が絶妙すぎる!歴史小説ファン必読ですよ♪
2014/07/10
二分五厘
三好元長という武将を『じんかん』を読むまで知らなかった。息子・長慶以前に機内で堺公方樹立にしながらも、不遇の最期を遂げた男。松永久秀に多大な影響を与えながら、あまりにも早く時代を駆け抜けていったこの男を主役に据えた本書を読む。祖父・之長との確執、足利義賢・細川六郎との絆、宿敵・細川高国との戦いを経ながら樹立した政権。しかしそれは内部から不協和音が、外部からは表裏定まらぬ情勢により瓦解寸前に追い込まれる。起死回生の一手を打つ元長に……。理想を求めながらも、己の才ゆえに疑われ、裏切られ続けた男の生きざまは。
2022/02/05
マサキ@灯れ松明の火
元長、大樹、六郎の3人は…実の兄弟のように育った。三好元長…その出生には謎が多い。元長…権謀術策にたけ、かつ天性のものと思わせる戦術も見られる。そして…誰よりも優しき心を持つ武将。その優しさ故に…悲運の最期を遂げる。六郎…貴方は、余りにも若く無防備であった。何にも変えがたい『兄』を追い落とすとは…そして…時代は、否応なしに次なる者たちへと引き継がれていく。
2014/08/11
ren5000
やはり天野さんはちょっとマイナーな名将を書かせたらうまいし面白いですね。今回は三好元長ですか、あまり知らないけどその時代は身内同士の争いで京や堺など当時の主たる都市や民をめちゃくちゃにした日本史上もっともバカな時代ということで記憶しています。しかしこうやって読むとこの時代は良くも悪くも魅力ある人物が多い気がします。それと名だたる人物が集うこの時代に松永久秀が出ないと思っていたらそうきましたか。こういうところがまたまたにくいよ天野さん。
2014/05/17
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