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台所のラジオ

台所のラジオ

台所のラジオ

作家
吉田篤弘
出版社
角川春樹事務所
発売日
2016-05-12
ISBN
9784758412841
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台所のラジオ / 感想・レビュー

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風眠

子どもが駆けてゆく足音。カラスの鳴き声。冷蔵庫を開けて、さて夕食は何を食べようかと考える。灯りを点けようかと少し迷いながら。何となく現実の世界から切り離されたような夕方の台所。ラジオのスイッチを入れる。静かに話す女の人の声が、耳に届く。ここはどこだろう?なんだか夢の欠片のようにふわふわとして、現実の世界からほんの少し謎めいた世界へと誘われるよう。食べものと、それにまつわるエトセトラ。郷愁も妄執も、迷いも憂いも、食べたものとともに思い出となっていく。哲学のような、おとぎ話のような、小さな12篇の物語たち。

2016/08/14

nico🐬波待ち中

夕方にひとり、ラジオを聴く。家の台所で。静かな声の女性アナウンサーのお喋りを、食事をとりながら心穏やかに聴く。食べるものは聴き手により様々。12編のショートストーリーが、時に登場人物を交差させながら進んでいく。『さくらと海苔巻き』『油揚げと架空旅行』『明日、世界が終わるとしたら』が特に好き。「明日から無人島へ行くことになったら、今夜何を食べるか」ラジオから聴こえてきた質問に私も思いを巡らせる。さて何にしよう…美味しいと評判の〈丸山レストラン〉の紙カツなんていいかもね。もちろんカジワラ印の黒ソースをかけて。

2020/01/19

あつひめ

ラジオの音がするだけで孤独じゃなくなったり、音の世界に心が迷い込んだり。テレビのようにガチャガチャこちらの世界に入り込んで来ない…ラジオが私は好きだし、この物語にもそんな空気が流れているように感じた。つかみどころがない、不思議な世界を垣間見るような吉田さんの世界も好き。読み終えたあと、しばらく静かにぼんやりしていたくなる。ひとりで過ごすのも悪くないと改めて思える一冊。

2016/10/24

モルク

取り立てて大きな事柄が起こることもないが、じんわりくる短編集。ラジオから流れてくる女性パーソナリティーの静かな声。家事をしているとき、手作業をするときこういうのって邪魔にならずほっとできる。この声で少しずつ繋がっている感じのお話。「さくらと海苔巻き」「明日、世界が終わるとしたら」「マリオ⚫コーヒー年代記」「十時軒のアリス」が好き。吉田さんの作品はときどき無性に読みたくなる、疲れているとき、イライラしているときに読むとなぜか心が和む。

2017/10/29

みうか

キッチンより台所、テレビよりラジオが似合う12の短編集。何気なく聞き流す台所のラジオにはちょっとした魔法がかけられているのかもしれません。例えばそれは、時に人を無意識に突き動かす魅惑の周波数を奏でる女性の声だったり。でも大袈裟じゃいけません。さり気なく、さり気なく。そうしてラジオを聞いた人は食べたり探したりリズムを刻んだり、不思議な波に乗りながら今日もどこかで生きているのです。

2019/12/27

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