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曲亭の家

曲亭の家

曲亭の家

作家
西條奈加
出版社
角川春樹事務所
発売日
2021-04-15
ISBN
9784758413732
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曲亭の家 / 感想・レビュー

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旅するランナー

「南総里見八犬伝」などの読本作者、曲亭(滝沢)馬琴。この堅物な人物と、小うるさい妻、癇癪持ちの息子がいる、お手伝いさんが即やめる、ブラックな家に嫁ぐお路さんが主人公。苦労の連続だけど、持ち前の賢明さと勝ち気と心優しさで、なんやかんやで家を守ります。過ぎてしまえば、なんだか幸せ。「小さいからこそ、慈しむのです。幸せとはそもそも、小さいものなのですよ」っていう思いで、あれやこれやで偉業も為し遂げちゃう。こんな事実があったんですね。素敵な読み物でした。

2021/07/05

いつでも母さん

「幸せとはそもそも、小さいものなのですよ。」だから慈しむ。曲亭馬琴が舅の家に嫁いだお路の生涯。横暴な舅に癇癪持ちの夫と姑…一度は家出をするものの子を身籠って母として、更には嫁として子と家に尽くすお路。諦めと受容の年月の中で視力を失くした馬琴の手足にもなり、自らの存在意義に覚醒する姿は天晴れとも思う。夫より家長、夫婦より家に重きを置いた時代とは言え、曲者ばかりで仕えるのはしんどいはず。我慢だけではなく、その場所で自ら花咲いたお路がいっそ誇らしいが、お路も目を病むのは切なかった。八犬伝の陰にお路ありだ。

2021/05/07

みっちゃん

この人、すごい。当時の女性は皆、辛抱強かったろうが。舅の滝沢馬琴は細かくて傲慢。姑は我儘で気分屋。そして一番ダメダメなのが夫だもの。己の中に屈折させた劣等感を爆発させて妻に当たるとか。一番キツい、と思ったのは、お腹の中の三番目の子を、謂わば蹴り殺されたようなものなのに、その後も同衾して子を為すところ。どんな気持ちだったのか。と読んでいるこちらが怒り心頭なのに、彼女はどこまでも明るくて、日々の小さな幸せを大事に生きていく。彼女がいなければ、あの『八犬伝』が完成する事はなかった。でも長男の早逝は辛かったろう。

2021/07/20

タイ子

曲亭(滝沢)馬琴の息子に嫁いだお路という女性の半生の物語。冒頭から何やら不穏な雰囲気。こんな家出てやる!と息巻いて実家に帰る路の姿。でも、結局は嫁家に戻り病弱で癇癪もちな夫、気難しい舅、厳格な姑の元で子供を産み、家を切り回していく。若くして夫が病死の後、馬琴の目が見えなくなる。馬琴の口頭筆記をする2人の姿が凄まじく、必死に喰らいついたお路がいたからこそ「八犬伝」が最後まで読めたのだろう。馬琴の業、自分の生き様を陰も日向も余すことなく読ませる西條さんの文章に惚れる。修羅の家にも幸はどこかにあったはず。

2021/06/08

のぶ

とても面白い時代小説だった。滝沢馬琴の息子に嫁いだお路を主人公に、その半生を描いた作品。前半部分は、滝沢家の医者ながら体が弱く、内弁慶で癇癪持ちの夫、宗伯に嫁いだお路を家族の一人として描いている。馬琴の取り仕切る個性的な面々を相手に、しっかり者の妻として、子供は太郎と二人の女子を生む。馬琴は売れっ子の作家として活躍しているが、年齢も70を過ぎ、衰えを感じていた。特に目を病み失明状態になったところで、お路は南総里見八犬伝の口述筆記を行った。人物造形に秀でた物語で、今まで読んだ西條さんの本ではベストだった。

2021/04/26

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