屋根裏のチェリー
屋根裏のチェリー / 感想・レビュー
ちょろこ
心が凪いでくる一冊。無音だった世界が音を取り戻すような出会いの音を奏でていくような物語だった。静かに紡がれていく言葉と世界に、自然と心が凪いできて癒された。たぶん、人生というもの、人が一度は経験すること、心に抱えているものを吉田さんは優しく掬い上げ柔らかな言葉に変えてくれて、それが優しいメロディとなって心を撫でてくれるから。自分を一番理解している、きっと誰の心の中にもいる住人チェリーの存在も心に優しい。たとえ自問自答、遠回りしてもいつか自分の心が穏やかになれる場所がある、そんなことを教えてもらった気分。
2021/09/08
アン
鯨オーケーストラが解散後、古いアパートの屋根裏部屋に引きこもる元オーボエ奏者のサユリさん。そんな彼女の頭の中には、いつも陽気で励ましてくれる優しいチェリーがいて大切な話し相手に。そんな彼女に人との繋がりが生まれ日常に変化が訪れます。「人生は出発の繰り返し」歩みが止まり前へ進めない時があっても、誰にでも身近に待っていてくれる何かはあって、自分を信じて扉をノック…「大丈夫だよ」心を支えてくれるあたたかい声。サユリさんが始めに吹くラの音はみんなをもう一度繋ぎ未来へと。心を満たす愛のメロディーが聞こえてくるよ。
2021/11/13
けんとまん1007
チェリー・・・自分の中の自分の声なのかな。心の声とでも言えばいいのかもしれない。少しのきっかけが、少しの繋がりになり、それが回りまわって自分に帰ってくるようなものがたり。きっかけを作る人、しかも、新しいことを作る人は限られている。それは、必ずしも、俗にいうエネルギッシュな人とは限らない。そうではない、思索する人、人のことを思う人ではないだろうか。
2021/09/29
nico🐬波待ち中
サユリの頭の中にいつもいる小さなチェリー。陽気なチェリーは、マイナス思考で愚痴ってばかりのサユリの側にいつもいてくれる大切な存在。古いアパートの屋根裏部屋に引きこもるサユリを外の世界へと導いてくれる。外の世界で迷いそうになるサユリを大丈夫と優しく励ましてくれる。『流星シネマ』のサイドストーリー。今回は鯨オーケストラの元オーボエ奏者・サユリ目線で『流星シネマ』やその続きの物語が楽しめる。お馴染みの彼らにもまた再会できて嬉しい一冊。吉田ワールドには今回も胸をきゅっと掴まれ、固くなった気持ちもほぐされ癒された。
2021/08/23
里愛乍
静かにゆっくり、言葉の海を揺蕩うように文字を追う。衝撃の展開もどんでん返しも要らない、ただただ気持ちよいこの時間。吉田篤弘さんの本は自分と相性がいいのか手にするだけで、もっと言えば背表紙並べて眺めてるだけでも癒される。ひとりの時間を楽しみたい「思い」の時間で過ごせるからかな。「簡単に言葉に置き換えられるようなことは、もう信じられないの」ミユキさんのこの言葉にはっとさせられた。うまく言葉に出来ない思いは、きっと気のせいでも勘違いでもない何かがある。それを優先するのも悪くない。自分を生きたい。
2021/12/20
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