茜唄(下)
茜唄(下) / 感想・レビュー
W-G
ついに義経登場。下巻序盤にちらっと姿を現しながらも直接の言動を抑え、ただ奇策の数々で平家を淘汰していく様子が、不気味な強さを上手く演出している。著者の持ち味といえる爽やかな好漢の描写が活きた檀ノ浦の解釈も良い。反面、モヤモヤが残るのも事実。知盛をあまりに快男児として作り過ぎたがための結末なのだろうが、義経のその後を思うと、結局すべてが水泡に帰してしまっている訳で、それでも何とか唄を残すことで一分の矜持を見せたようでも、そうなると今度は、負けた後のことばかりを十重二十重に考え巡らせていたようでなんとも…。
2023/06/04
starbro
上下巻、700頁強完読しました。著者版源平合戦、滅びの美学を清々しく見事に描き切っています。全編に琵琶の音が、聞こえて来そうでした♪ 今年のBEST20候補です。 http://www.kadokawaharuki.co.jp/book/detail/detail.php?no=6955
2023/05/12
パトラッシュ
(承前)軍事外交の知略で義仲を敗死に追い込んだ知盛だが、戦神の申し子義経の前に一の谷、八島と敗北を重ねるしかなかった。追い詰められた知盛は勝者たる頼朝が全てを独占することを許さず、千年先を見据えて平家の滅びの叙事詩を後世に伝える最後の戦いを希子に託す。そのため壇ノ浦では教経をはじめ一門による驚くべき戦いが展開され、ついに知盛の策謀が完成するのだ。平家物語が知らぬ間に編まれていたと希子に告げられた頼朝は、己が敗者だったと悟って狂乱するしかなかった。歴史を味方とした知盛の見事な勝利に、深く満たされるばかりだ。
2023/04/11
海猫
「鎌倉殿の13人」で源氏側から描かれた合戦は勝ち戦の連続であったが、この本では平家側から描いているので負け戦が続くことになる。なんとも哀しく痛ましいがそれゆえに物語が美しさを放つ瞬間が多々あり、なんともいえない感慨が心に渦巻く。合戦場面が臨場感生々しく、それゆえにドラマチックである。上巻だけでは見えなかった作品の意図が、終盤になってハッキリする仕掛けが抜群の効果。壮大な歴史ミステリーであり、「平家物語」という題材を持ってして現代を照射しているようでもある。大河ドラマとの相乗効果もあって興味深い内容だった。
2023/06/21
旅するランナー
「仮に平家が滅亡しようとも…我らが抗い続けた美しさを、愚かしさを、生きた証を残しましょう。後の者がそれに学び、いつの日か人が争いを捨てることを信じて」平知盛の思い。平家武士達の勇猛果敢な戦い。それを打ち砕く義経の疾走。両雄が対峙し理解し合う、檀ノ浦の戦いの真実。そして、西仏に平家物語を伝授する人の正体が分かった時、その人が頼朝との戦いに勝利する時、鳥肌が立つ。新たな視点で源平合戦を見せてくれる驚愕の書。
2023/07/23
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