一の富: 並木拍子郎種取帳 (ハルキ文庫 ま 9-1 時代小説文庫)
一の富: 並木拍子郎種取帳 (ハルキ文庫 ま 9-1 時代小説文庫) / 感想・レビュー
藤枝梅安
副題は「並木拍子郎種取帳」。実在の浄瑠璃作家・並木五瓶とその弟子・拍子郎の捕物小説。拍子郎の本名は兵四郎。兄は北町奉行所に勤めているが、四男の兵四郎は五瓶の弟子になり、身分的に不安定。芝居町の料理屋・和泉屋の娘・おあさが五瓶のところによく顔を出す。5編の短編は、どれも拍子郎が芝居の「種」を拾い集めるところから、事件を解決していく物語。事件そのものや、その解決にはスッキリしないところもあり、事件の種明かしよりも、事件に関連する人々の暮らしぶりに焦点があてられている。が、消化不良になっているのが少し残念。
2011/05/09
kaoru
江戸の風俗に詳しいと定評の作者だけに、捕物帳の事件に江戸の風俗が取り入れられていて面白いし、ためになります。また、登場人物たちのキャラも良く、今後の関係も気になるところなので、シリーズを追いかけます。
2017/01/27
onasu
続編を見つけたのを機会にした再読で、読んでいくと所々記憶はありましたが、それより(再読により)、少し距離をおいて読めた分、特異な界隈である歌舞伎小屋周辺の雰囲気と、設定の妙をより楽しめました。 狂言作者、晩年の並木五瓶と弟子入りした奉行所同心の家の次男、拍子郎(ヒョウシロウ)。事始めに課したのが、五瓶も江戸に来た当初していたという市井でのネタ探し。 謎解きの役どころは定番ですが、舞台を歌舞伎興行の「周辺」としたのが味噌。そしてやはり、料理茶屋の娘おあきとの仲も気になるし、早々に続編に進むことにします。
2018/01/15
onasu
江戸の大きな芝居劇場のある町での捕物帳。謎解きも松井さんらしい趣向で。 大坂より移り住んだ人気狂言作者、並木五瓶と言えば、解説にある通り、著者の初作「東洲しゃらくさし」。途中で思い出した。 その五瓶宅に「ちと、面白いことが…」と、飯時に限って現れるのが弟子の拍子郎。狂言の勉強にと「種取帳」を懐にネタを集め、それを種に拍子郎の兄の定町廻同心や芝居茶屋の娘おあき等を巻き込んで…。 町も人もおもしろい。けど興がのるのは最後の5編目。続きも気になる好いた惚れた、諸々絡めての一の富。続編も何れの機会に。
2014/08/30
あすか
狂言作者に弟子入りした武家の拍子郎が様々な事件に出会い、解決していく。拍子郎の生真面目さがすっとぼけていて、スピード感のある関西弁のお師匠との対比がなんだかいい。気の強いおあさちゃんの純情も可愛らしく、初心な恋がこれからどうなるかも気になる・・・。
2021/09/22
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