おたふく物語 (ハルキ文庫 や 7-2 時代小説文庫)
おたふく物語 (ハルキ文庫 や 7-2 時代小説文庫) / 感想・レビュー
じいじ
山本周五郎傑作の一つ、短篇『おたふく』を含むシリーズ三部作。美人で生真面目でユーモアに富んだ姉おしずを主人公にした連作三篇は、文句なしの面白さです。とにかく、この姉妹のキャラが秀逸。同じ親から生まれてもこうも性格が違うものなのか…。周五郎の筆の巧さが光ります。二人の会話に腹の底から笑いがこみ上げてきます。人情とユーモアにあふれる江戸下町の温かい風情が描かれていて、ほっこりした気分を味わえる、たいへん読み心地の好い一品です。
2019/02/21
ココ
人情の機微が優しく、温かく描かれ、安心感を覚える。山本周五郎、未読の作品がまだまだ沢山あることが、何故か嬉しい。
2019/03/13
キムチ
生涯2人の女性と連れ添った周五郎。どちらも彼の作品に色濃く影響を残しており、この連作は、まさにその日々の在り方を登場人物の言葉・容姿・しぐさ等で彷彿とさせている。若干名前を変えて登場するが、いずれも下町の元気がいい2人姉妹。自分をてらわず、男に身をゆだねる妖しさ、そして自らの立場を噛みしめて後ずさりしようとしてしまう哀しさを併せ持つ姿が平易な言葉で綴られる。てらった言葉が一つもないのに、日本人の原点の姿が浮かび上がる1冊。 兄として登場する栄二は「さぶ」の栄次と面影がだぶる。
2014/01/04
nstnykk9814
5本が収められた短編集だが、前半3本は表題「おたふく物語」の連作。あとの2本も夫婦の情愛がテーマの良作だった。おたふく物語の朗らかな姉妹のやりとりが見事。「おさん」のかぎかっこをいっさい使わない死者との対話も心に沁みた。あくまで男目線の女性の描きかただとは思うが、やっぱり山周は面白い。
2016/07/07
剛腕伝説
【おたふく】三部作、【凍てのあと】、【おさん】市井もの短編集。【おたふく】の三作はそれぞれが独立した物語を、少し手を加え纏めたもの。なので姉妹の年齢や両親の没年等の矛盾はあるもののそれもまた一興。底抜けに明るくてお人好し、そして一途なおさんは可愛い。久々に泣いてしまった。【凍てのあと】同じ長屋に住む青年と浪人の共通の闇を通して希望を描く秀作。【おさん】身体中が性感帯の様なおさんに男は狂ってしまう。おさんも不幸なら関わった男達も不幸。参太に付き纏う浮浪児・伊三の風の又三郎の様なキャラクターが秀逸。最高の一冊
2022/11/11
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