火星ダ-ク・バラ-ド (ハルキ文庫 う 5-1)
火星ダ-ク・バラ-ド (ハルキ文庫 う 5-1) / 感想・レビュー
nobby
これはまた圧巻のSFミステリ。火星を舞台に繰り広げられる壮大な捜査&逃亡劇を堪能。その作風は骨太ハードボイルド、そしてラストに向けて「この世に生まれてきてよかったと、心の底から思ってもらいたい。」まさに哀しきラブストーリーだ… “超共感性”という特殊能力を持つプログレッシヴ、その謎めいた存在が明らかになるに連れて一気に加速する展開を夢中で読み進めた。その背景として描かれるのは、人間の自意識過剰からのエゴであり、圧倒的優位を持つ者の悲哀…それでも分かりやすい敵味方の構図の中で導かれた優しさは決して悪くない…
2021/03/20
ナルピーチ
連続殺人犯の護送中、幻覚症状によって意識を失う水島。目を覚ました彼の前には射殺された同僚と逃亡した殺人犯。何故か疑われる水島は真相を探る為に逃走を謀る事に。そしてある少女との出会いが激動の幕開けへと繋がっていく…。これぞSF!完成度の高い衝撃の著者デビュー作は火星を舞台にした近未来型のハードボイルド小説。流麗でありながら歯応えのある文章と、加速感に溢れたハードなアクション。そしてタイトルにも使われている“バラード”の曲調に沿うように、その本質は男女の恋模様を謳った儚さと切なさが残るラブストーリーでもある。
2022/11/21
つねじろう
う〜んクオリティ高いわ。しかもデビュー作だって。さすが上田早夕里。こじらせ過ぎてやけっぱち気味の警官とDNA操作で生まれた不思議な力を持つニュータイプ15歳の少女。スタイル抜群のアーマースーツが似合う相棒とマッドサイエンティスト的な父親。で舞台は火星。ほらSF的なもの全て揃ってる。それでいてアクションやミステリ要素もラブロマンスもたっぷり盛り込み読み手を飽きさせない優れもの。火星の情景描写も行った事があるみたいにリアル。思わせぶりな終わり方をしてるので是非続編を期待するものです。
2020/08/14
ざるこ
治安管理局の水島は凶悪犯を護送中に怪物に襲われる幻覚を見て、意識が戻るとバディは殺され凶悪犯は姿を消していた。バディ殺害の疑いをかけられた水島は個人で捜査を始める…。人為的にデザインされた遺伝子で生まれたアデリーン、もっと遠い宇宙へ進出しようとするグレアム、無骨で人間臭い水島。キーとなる人間の「感情」が、人を繋ぐことにも周りを破壊することにもなる。SFというより人間ドラマという感じ。この話、地球でもよかったんじゃ?と思ったけど終盤にかかると納得する。「空を天蓋で覆った火星都市」この設定だけでもう満足。
2019/02/24
とくけんちょ
再読。正統派SF。火星が舞台の遺伝子操作により生み出され特殊な能力を持つ新人類をめぐるよくある話。なんだが、物語に魅力がある。過去に問題を抱えて、火星で刑事になった中年男が同僚の相方を殺され、その謎にせまりながら陰謀にかかわっていく。絶対に外さないストーリー展開。またいつか読み直すだろう。
2023/08/13
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