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家霊 (280円文庫)

家霊 (280円文庫)

家霊 (280円文庫)

作家
岡本かの子
出版社
角川春樹事務所
発売日
2011-04-15
ISBN
9784758435437
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家霊 (280円文庫) / 感想・レビュー

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夢追人009

太陽の塔で有名な芸術家・岡本太郎さんの母・岡本かの子さんが享年49歳・脳溢血で亡くなられる最晩年に発表された短編小説4編を収めた2011年刊行のハルキ文庫(280円文庫)の一冊ですね。本書を読む前に表題作「家霊」の題名から怪談噺を連想しましたが、実際はそういった要素は全くありませんでしたね。まあ文学作品は裏の意味を考えると様々な読み方があって頭が痛くなりますが単純に描かれる人々の感情を追うと普遍的な人間の性が見えて来て目を開かされますね。『老妓抄』は老いて尚逞しく意気盛んな老妓と電気器具屋の青年の話です。

2021/09/03

新地学@児童書病発動中

4つの名作短編を収録。どの短編も命の輝きを描いたもので、忘れがたい印象を残す。命の輝きといっても、明るく華やかな面ばかりを書くのではなく、人間の影の部分も書き込まれており、明暗のコントラストが物語に奥行きを与えている。鋭い感覚に基づいた色彩豊かな文章が印象的で、この色彩感覚は息子の岡本太郎氏に受け継がれたのかも。一番の好みは「鮨」だ。寿司屋の娘ともよと客の湊の心の通い合いが良い。湊の幼年期のエピソードは泣けた。どの短編も食べ物の描写が巧みで、食べることは命に直結することを作者は自覚していたのだろうか。

2016/07/03

じいじ

 著者の名前は「芸術は爆発だ!」とTVで叫んだ岡本太郎の母君で歌人なのは知っていた。読むきっかけは、行きつけの書店のおばちゃんのたってのお薦めで…。勿論初読み。4編の短篇集。おばちゃんの『鮨』いいですよ!の言の通り【鮨】が面白かった。東京の山の手と下町の境目の小さな鮨屋が舞台。訪れる客は千差万別。看板娘ともよが絡むくだりが面白い。好意を抱く常連さんの揶揄が店の和やかな雰囲気を醸し出している。常連だけに出してくれる珍味(鮑のハラワタ、鯛の白子…を巧みに調理して)で、一杯飲みたくなった。

2017/03/29

やきいも

「夜な夜などじょう汁をせがみにやってくる不遇の老彫金師とどじょう屋の先代女将の秘められた情念を描いた」(表紙記載のあらすじより抜粋 ) 短編の『家霊』が好きです。妖しさと美しさをあわせもつきらびやかな文章が素晴らしい。暗い作風なんだけど読んでると生きる情熱がわいてくる。大好きな日本人の作家の一人です。この本に収録されている短編『老伎抄』の最後にでてくる短歌 ( 「年々にわが悲しみは深くしていよよ華やぐいのちなりけり」 ) も心にふかくきざみこまれました。昭和の初期に発表された何度も読み返したくなる本です。

2015/03/31

あたびー

実は岡本かの子を読むのは初めて。その滑らかなのに小股の切れ上がったような、詩情に溢れているのに余計なことを口走らない、何とも言えない文体に魅了された。この薄い本には四編の短編が収録されている。「老妓抄」作者と書かれている人物が一時期短歌の指導をしたという老妓が、発明家を志す男のパトロンになる。男はいざ研究のできる環境に置かれてみると一向ものにならず逃げたり戻ったりする。それを見ながら大きく構える老妓の器の大きさと、内心の気の弱さが人間らしくて良い。今はこういう人が少なくなった。

2021/09/07

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