檸檬 (280円文庫)
檸檬 (280円文庫) / 感想・レビュー
hiro
森見さんの本で『檸檬』のことを改めて知り、実際に読んでみたいと思っていたが、この280円文庫を見つけ、巻末の(解説ではなく)エッセイも高田郁さんだったので購入した。読んでみて『檸檬』を含む収録されている5編すべてが、死に向かい合いながら書かれていると感じた。特に『檸檬』は10ページにも満たない作品でありながら、これほど後世の作家や多くの読者に影響を与えているのは、本当に驚きだ。また、高田さんのエッセイで、森見さんもできなかった、檸檬を京都の丸善に置いてくるということを、高田さんが実行していたのには驚いた。
2013/08/13
chimako
こんなにも情景の浮かぶ作家だったのだと、何十年ぶりに読んで思う。差し色と言うのだろうか、暗い色彩の中のレモンイエロー、闇夜に光る月。爛漫の桜でさえ思い浮かぶのは闇の薄桃色。漆喰に吐く血痰。どれもが行きどまりを感じさせ気味悪く頭から離れない。今まさに桜は満開の時期をむかえ、そろそろ花びらを散らす準備を始めている。桜の下には屍体が埋まっている……困ったことに、桜の美しさは尋常でない。考えられない数の花をつけ一斉に散る。今年の檸檬忌は桜の中。丸善の書棚にはきっといくつかのレモンが置かれたことだろう。
2018/03/29
紫 綺
hiroさんの感想を読んで、珍しく日本文学史上の傑作を手にとる。まるで、膨大な言葉の海をゆ~らりとたゆたっているような読み心地だ。巻末の髙田さんのエッセイにもあるように、檸檬の鮮やかな色がいつまでも残る。
2013/08/31
佐々陽太朗(K.Tsubota)
梶井基次郎という作家を知ったのは、万城目学氏の小説『ホルモー六景』第三景「もっちゃん」を読んでのこと。そこには平成17年、丸善京都河原町店が閉店した日、フロアのあちこちに客がこっそり置いていった檸檬があったというエピソードが語られている。梶井氏は31歳で夭折した。命日3月24日は「檸檬忌」と呼ばれる。もう丸善河原町店は無い。来年の3月24日には京都ラクエ四条烏丸3Fか岡山シンフォニービル地下1階に檸檬を持ってウロウロしている私がいるかもしれない。ちと気触れてしまったか。
2011/08/16
momogaga
『城のある町にて』この作品が心に残りました。この短編も他の短編同様に主人公が肺を病み、憂鬱に心を潰されています。しかし、城のある町での出来事が生きる希望を与えてくれる。読み直しをすべき作品です。
2022/07/09
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