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智恵子抄 (280円文庫)

智恵子抄 (280円文庫)

智恵子抄 (280円文庫)

作家
高村光太郎
出版社
角川春樹事務所
発売日
2011-04-15
ISBN
9784758435468
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智恵子抄 (280円文庫) / 感想・レビュー

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aika

「私にはあなたがある あなたがある あなたがある」自分の命に代えても救いたかった、逝ってしまった大切な、大切な貴女へそっと呟き、血潮が沸き立つように叫ぶ一節一節が、一音一音の響きが忘れられません。「わたしもうぢき駄目になる」と智恵子が放った時、光太郎の張り裂けんばかりの苦しみは、想像を絶します。その決して消えることのない苦悩を、互いの全てを捧げ合った日々のいとおしさを、生命を燃やして描いた詩に触れたとき、ああ、ふたりは幸福だと思いました。そして、究極の愛を吟った詩に出会うことができて、私も幸せです。

2018/04/29

イプシロン

自然に生きるということは今に心があることなのだろう。ほんとの空があった福島県二本松に生れ、阿多多羅山に抱かれ、阿武隈川を眺めて育った智恵子。自然の申し子のような天女に俗を強いる暮らしの残酷さよ。セザンヌに憧れ美の道を求め、己が才に悲嘆す。しかしそれは絶望ではなく、美の道を歩む光太郎に自分と同じ苦しみを味あわせたくないという犠牲の愛であり、慈悲だったのだろう。美に魅入られた二人が俗に生きる過酷さと、そのなかで光太郎が見た永遠の美わしさが籠った詩集。――鯰(なまず)=今の心で泳ぐ魚。濁った俗の水でも生きる魚。

2019/09/19

かめりあうさぎ

言わずと知れた名作を再読。何度読んでも、光太郎さんの智恵子さんへの愛の深さに胸をつかれると同時に、智恵子さんの狂暴なまでに純粋で一途な愛に溺れそうになります。その愛を受け止めた光太郎さんだからこそ書けた言葉の数々。でもその事自体は特別じゃなくて、誰にでも起こりうる普遍性がそこにあるからたくさんの人の心に響くんだと思いました。若い頃よりもより多くの感情を受け取れた気がします。

2019/06/01

トールパパ

他の男に嫁ごうとする智恵子への悶えるような愛、嫉妬が切々と綴られる「人に」に始まり、智恵子は死んだのに智恵子が作った梅酒は残り、それを味わう現身の無情を静謐に詠う「梅酒」で終わる、只々智恵子を見つめ、智恵子を感じ、智恵子のためだけに造られた詩集。 智恵子が徐々に狂っていく様を、それを怖れる智恵子の様子を、オロオロしながらも、どこか冷静に観察している光太郎の心持ちにも、一種の狂気を感じる。「人に」「あどけない話」智恵子の最後とその後の様子を詠った「レモン哀歌」から「梅酒」までの4詩は特に好き。

2015/04/18

予備知識ゼロで読んでも、じわじわと心に言葉が凍みてきた。特に『人類の泉』から『僕等』『愛の嘆美』に至る流れには圧倒された。全編を貫くのは、愛への畏れだと思う。愛すること、愛されること、そしていつか失うこと。どれもとても怖いけれど、求めずにはいられない▼日本語には、それほど難しくないのに、失われてきた素敵な言葉が沢山あるのではないか。埋もれてしまうのがもったいないし、もっと知りたいと思わされた▼「私はあなたの愛に値しないと思ふけれど あなたの愛は一切を無視して私をつつむ」

2019/02/04

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