桜桃 (280円文庫)
桜桃 (280円文庫) / 感想・レビュー
優希
4編の短編がおさめられていますが、どれも美しかったです。4編中2編は既読でしたが、それでもその世界観に魅せられました。人間の弱くて優しい姿が活写されている印象です。退廃すら感じるのに生命の強さも併せ持っている不思議さ。そんな魅力が凝縮された1冊だと思います。
2016/09/22
ケイ
「桜桃」のみ再読。初読では、これが太宰最後の作品とは知らなかった。知ってから読むと、作者のツラさが震えるように伝わってくる。男とは弱いものよ。あなただけではないですよ。現実を直視できず、斜めに見る。面と向かい会えず、逃げだす。口では悪ぶる。男なんて多かれ少なかれ、みんなそうなんだから、それを苦にせずふんぞり返っていりゃあよかったんですよ、太宰さん。
2015/06/20
aquamarine
「ヴィヨンの妻」「秋風記」「皮膚と心」「桜桃」の4編を収録。男性視点はともかく、女性の心の機微をこれだけ描く太宰の文章に圧倒される。なんでこんなに女性の内側を知っているのだろう。「桜桃」は以前読んだ時は、夫婦喧嘩の末家を飛び出し桜桃を食べる夫に、イラつく思いが大きかったが、今回はイライラするより笑ってしまった。なんかこんな男の言い訳わかるかも、みたいな。もちろん母親としては「子供より親が大事、と思いたい」とは絶対ならないけど。次にまた何年か年を重ねたとき、私はどの文章から何を思うだろう。桜桃忌に。
2022/06/19
emi
青空文庫版で読了。家族を持ったからといって強くなれる男ばかりでないという、短い話。口にしたり頭で思うこと、行動をすること、これが一致すると信頼になるのだけど、まるでちぐはぐゆえに失望を通り越して哀れみまで浮かんでしまう。この男の妻の目線で読むと、なんとも不快な夫。この男の目線で読むとなんとも不憫な男。噛み合わない夫婦、爆発する前の奇妙な静けさ。不味そうに食べては種を吐き出す桜桃。こうでありたいという理想に近づけぬ男の空回りの空気の中で、桜桃の色彩が妙に明るくてやりきれない気持ちにさせた。太宰治最期の作品。
2016/06/19
たんたん(休みます)
「子供より親が大事、と思いたい」最初は親というのは自分の両親の事かと思ったけどどうやら自分の事とわかり、ぷぷっやっぱり太宰や〜と笑ってしまった。この文うまいなぁ。歌のようにしばらく頭をぐるぐる回っていた。太宰のことだからこの言葉にもたくさんのウニョウニョした感情が込められてるんだろうな。悪い人ではない生真面目で繊細で弱い人なのだ。今回もダメ男っぷりに笑わせてもらいました。ありがとうございます。桜桃忌に読了。教えてくれた読友さんに感謝。「涙の谷」がわからないまま…
2016/06/29
感想・レビューをもっと見る