地獄変 (ハルキ文庫 あ 19-2 280円文庫)
地獄変 (ハルキ文庫 あ 19-2 280円文庫) / 感想・レビュー
佐々陽太朗(K.Tsubota)
本題の小説について、まず「地獄変」ですが、狂気ともいえるほど突き抜けた何かを持つものを芸術や美と呼ぶならば、これほどの耽美はあるまい。このような話は正気の人間からは生まれ得ない。小説としてスゴイが私は二度と読む気がしない。続いて「六の宮の姫君」。この時代に女が経済的基盤を持つとすれば、男に通わせるしかない。そんなことにまったく興味を持てない無垢な女を芥川は批判的に書いたのか? 否、文章を読む限りそのような意図は感じられない。彼は無垢なままでは生きることが出来ない現世というものに絶望していたのではないか。
2017/10/24
桜もち
『河童』に躓き芥川を敬遠していたが今回『読める!分かる!しかも面白い!』とムスカ並みに貪り読んだ。文章の立ち上がり方が半端じゃない。六の宮の姫君は経済的理由から、妾みたいなことになるが『蝶鳥の几帳を立てた陰に、灯台の光を眩しがりながら、男と二人むつびあう時にも、嬉しいとは一夜も思わなかった』。『灯台(電気)を眩しがりながら』この部分あるのとないのとで全然違う‼︎入れただけで部屋の中の陰影、空気感が迫ってくる。情景描写が上手いから美文になるのではなく、情景は文章で創られるんだな。芥川のすごいと思うのはそこ。
2017/03/22
優希
芥川の描く世界は何故こんなに魅力的なのだろうと思わずにはいられません。世界がグッと近づいてくる感覚が好きです。
2023/03/25
優希
どうして芥川の世界はこんなに魅力的なのでしょう。平安時代の怖さと美しさに引き込まれます。文章の美しさと情景の美しさが芥川の持ち味なのでしょうね。芥川の魅力が凝縮した4編を楽しみました。
2022/07/10
柊よつか
2017年最初の読書は大好きな芥川龍之介にしたいと思い、帰省先に連れてきた一冊。収録数は少ないが、収められた四篇はどれも心がざわめく名品ばかり。収録順に逆らって一番初めに読んだのは「藪の中」。四人の証言と三人の独白による構成の妙味、独白が結ぶ像が一つに重ならぬまま終わってしまうあの余韻…。〈真相は藪の中〉の語源であることが頷ける、大好きな一作。取り憑かれたような残酷な希求に焼かれる「地獄変」、ただひたひたと朽ち枯れてゆく「六の宮の姫君」、西洋文化したたる鹿鳴館の一幕を日本語で絢爛に描く「舞踏会」も大好き。
2017/01/02
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