死者の贈り物 (ハルキ文庫)
死者の贈り物 (ハルキ文庫) / 感想・レビュー
やすらぎ
語られることのない苦しみに耐えようと決めた夜。暁の喜びは絶え間ない急流にとけてゆく。未練を隠したいかのように蛇行して永遠に。苔むす石に花一片落ちてゆく。夕焼けの強雨を忘れたいかのように音もなく。朽ちていくように気づかれることのない静寂を、切なさと捉えられたのはいつからだろうか。考えてもきりがない。聴こえなくなってしまったから。苦しみに耐えてしまうと悲しみにも慣れてしまう。明日があるとも限らないのに、幸福のような眩しさを見つめている。記憶の片隅に雪一片落ちてゆく。忘れてゆく。私はここにいたのに。消えてゆく。
2023/11/30
chantal(シャンタール)
きっとある程度の年齢にならないと、この詩集の素晴らしさは理解出来ないかもしれない。私は人生の半分なんかもうとっくに越えてるだろうけど、それでもまだまだ近しい人の死に触れて来た経験は少ないし、「死とは生きる事」の境地にも達する事は出来ていない。でも、長田さんの詩を読んでいると、その日を安らかに迎えるためにも、一生懸命生きなきゃいけないなあと思う。朝、一杯のコーヒーを飲んだ時のあの何気ない幸福。そんな幸福の積み重ねが人生なんだなあ。
2022/06/17
HaruNuevo
昨年から詩を読むようになり、まだ数を読んだわけではないものの、あれこれ手にしてきた。 現時点で、今まで読んだ詩集の中で一番刺さるものがあった。 死を論じるわけではなく、逝った人々を偲ぶように言葉を紡ぎその先に僕たちはなぜ生きるのか、ともしびを灯してくれるような、そんな詩たち。 『わたし(たち)にとって大切なもの』、この詩に出会えたことはおそらく一生の宝物になるだろう。 常に手元に置いて、暇があれば開きたい、そう思わせる一冊だった。
2024/03/28
mako
静かで奥行きのあることばが、胸の奥まで染み入る。
2024/08/16
ぴの
詩を読んで涙が溢れたのは宮沢賢治以来(永訣の朝、無声慟哭、雨ニモマケズ)で、今は亡き長田弘さんの詩を全て読みつくしたいと思った。まず表題で敬遠される方も居るかもしれないが、とても入っていきやすく私にとってバイブルのような存在になってくれた。この全詩編には、死への恐怖ではなく、ただ仄かに嫋やかに「死の匂い」が漂っている。常に宮沢賢治詩集と重ねて枕元に置き、眠る前に時々開いて読んでは、涙で視界を潤わせている。解説は、偶然にも昔から大好きな川上弘美さん。秀逸。
2023/05/16
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