彼女が天使でなくなる日 (ハルキ文庫 て 2-2)
彼女が天使でなくなる日 (ハルキ文庫 て 2-2) / 感想・レビュー
しんごろ
星母島で託児所を併設したり民宿を営む千尋。 そこに子供にまつわる悩みを抱えながら、この宿にたどり着く宿泊客。決して悩みを解決するわけではない。過去にいろいろあった経験のある千尋が、癒やすわけでもない。でも何かを千尋から遠回しで教えてもらってる。読み手の自分も自然と何か気づきをもらってる。子供がいないからわからないけど、子育てをするに至っての労力はすごいんだろうなあ。深い物語だった。それにしても星母島の島民はいい人だ。とくに政子さん、ロックだわあ。格好よくて惚れてしまいそうだ。
2023/06/13
エドワード
九州北部にある星母島。 “モライゴ”として育てられた千尋は、託児所つきの民宿を営む。島にある母子岩が安産や子育ての悩みに役立つと聞いて訪れる人々。今盛んに議論されている少子化対策に関わる人々は皆この本を読んで欲しい。子育ての悩みは果てしない。お金だけでは少子化は解決しない。まっとうな子供に育てなければという呪縛、赤ちゃんの泣き声、公共空間の不寛容、仕事と育児の葛藤、夫婦・義父母のすれ違う思い、今の社会の全てが少子化の原因であることがよくわかる。あらゆる既成秩序から自由な千尋の爽やかさが心地よい好編。
2023/04/13
papako
タイトルがもったいないかもと思った。連作短編みたいで、その中の一編のタイトルなんだけど、ちょっとすっきりしないタイトルだったな。島で託児所併設の民宿を営む千尋さん。彼女のゆるぎなさがとても気持ちよかった。決して何かを決めつける結末ではないけれど、誰もが前を向いて歩きだす感じか心地よかった。
2024/11/04
煮豆
九州の星母島にある託児所が併設された民宿を営むのはモライゴとして島で育った千尋。パワースポットの母子岩のご利益目的の宿泊客たちの連作短編集。育児に悩んでいる親の描写がリアル。少しでいいから寝たい!なんでうちの子は大変なんだろうと皆が思ったであろう。近くに少しでも預かってくれる場所があったら心強い。今振り返ると育児疲れで体調不良だったんだろうな、あの頃のわたし。当たり前だと思って心の奥に追いやっていた気持ちは本当に当たり前なのか。ズバッと核心をつく言葉が散りばめられている良作!政子さんと千尋がカッコよかった
2023/12/11
よっち
九州北部にある小さな星母島。1年前大野麦生と一緒に戻ってきて託児所併設の民宿を営むようになった千尋。島の「母子岩」と呼ばれる名所にご利益を求めて様々な人々が訪れる連作短編集。育児と仕事の両立に苦しむ妻、千尋に興味を持ち探りを入れるライター三崎塔子、子宝を願う娘と母の関係、千尋を育ててくれた政子とその孫まつりと息子の陽太、そして掴みどころのない同居人・麦生との関係。一見ドライに見える千尋も訪れる人たちや周囲の人たちと同じように悩むこともあって、そんな彼女だからこそ寄り添える優しさがとても印象的な物語でした。
2023/03/15
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