江戸の都市プランナ-
江戸の都市プランナ- / 感想・レビュー
シブ吉
江戸の名主・熊井理左衛門。本書を読むまで、その名も知りませんでした。江戸末期の激動の時代に、江戸の司法を司るのが「町奉行所」ならば、行政に於ける陳情を代行で精査するのが「名主」といわれる町内組合の代表者たち。当時246名いた名主の中でも、ずば抜けた裁量を持ち、町人として「苗字」を許された3人の名主の中の1人が「熊井理左衛門」だった。江戸を愛し、数々の事業を行ってきた理左衛門が、なぜ歴史に埋もれてしまったのか。その謎にスポットライトを当てるとともに、現在に続く、都市行政の礎を感じさせられる興味深い一冊です。
2013/02/10
onasu
江戸後期、化政期より40年にわたり江戸の町名主を務め、その役目の他に名主2百数十名のとりまとめ役も担わされ、大規模な川浚いや株仲間の再興などにも尽力した熊井理左衛門。 この期の江戸の行政といえば、水野膝下の金さん、妖甲斐の両奉行しか知らなかったが、その執政には従前にも増して名主組織が使われていたよう。 初見の人物につき、失脚に関わることも知らなかったが、これも幕末の政争の愚によるものか。未知の人を掘り出せたのはよかったが、手にしたきっかけ、体を表しているとは言い難いタイトルは如何なものか?
2018/11/25
遊々亭おさる
天保期の江戸、町の行政を司る町人だった町名主の中でも、図抜けた才を持ちインフラ整備などで町作りに貢献した熊井理佐衛門、町を愛し数々の難題に直接向き合い、超人的な仕事ぶりを発揮した彼を著者は真の改革者と呼ぶ。偉大なる無名人を扱ったこの本、高尚な理想論を唱える御仁よりも、私利私欲を抑え現実を見据えて額に汗することが出来る人物のほうが役にたつのは自明の理、そういう人間になりたいと思いつつ、なれない僕は理佐衛門の爪の垢を煎じて飲みたいところ。いずれにせよ、歴史の闇に埋もれた偉人を掘り起こした著者の功績は大。
2013/07/29
ren5000
実に興味深い読書でした。天保の世の江戸を整備した町名主の熊井理左衛門という人のことを知れただけでも満足です。残念なのは自分が東京という町に疎いため町名やら地名によって頭の中に地図が描けなかったことかな?
2013/12/09
ムク
着眼点が面白い。武家サイドから語られることが多い江戸の歴史だが、江戸の街を支え、経済を回し、文化を担っていたのは紛れもなく町人たちであり、その中心にいた名主という存在はもっとスポットが当てられてよいはず。名前も知らなかった熊井理佐衛門の功績の大きさに驚きを禁じ得ないし、彼のような市井の人々の活躍をもっと知りたい。著者の今後の研究に大いに期待する。★★★★★
2013/04/17
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