人生なんて、そんなものさ: カート・ヴォネガットの生涯
人生なんて、そんなものさ: カート・ヴォネガットの生涯 / 感想・レビュー
ケイ
伝記。彼の両親のことや、生い立ち、ドレスデンでの捕虜生活、2度の結婚、作家として売れるまでの苦労、浮気がちな生活、そして最期まで。ヴォネガットの人生論などを読むと達観していると思ったが、実際はあれやこれやとあったようだ。煩悩の細部や、自殺未遂、何から何まで書かれるのだから、大変だ。転機は明らかに40代でアイオワ大学の講師となった時だろう。そこへ向かうヴォネガットが冒頭に描かれているのが上手いなあ。彼の再婚相手を読み手が絶対に嫌いになるように書いてあるが、これには少し悪意を感じた。分厚いが、おすすめ。
2017/01/23
harass
唯一無二のSF作家の評伝。良くも悪くもこの作家は時代の寵児だったのかという印象だ。ドレスデン爆撃の被災者の体験は傑作『スローターハウス5』でようやく作品に昇華できて、金銭的にも成功をおさめるようになったが、動機を失い作品を書けなくなっていた。そのくせどんなものでも売れるようになっていたのだという。晩年は二人目の妻の悪妻ぶりと老いに悩まされる。作品の作家イメージと実像にかなりのズレがあり人間臭いダメっぷりがらしいといえばそうだが痛々しい。この本の存在を最近になって知った。分厚い本だがファンなら必読。
2014/04/07
fseigojp
ハーパー・リーの優秀な評伝を書いた著者のヴォネガット評伝 彼の一連の長編は妙に私小説的な味わいがあるので、疑問が氷解した有益な本 ただし力作でながい!
2016/08/10
かえるくん
面倒くさいほどナイーブで、生活者としては不適格であるというエピソードが次から次へと出てくる。その前衛的で浮世離れした作風から、もっと仙人的な人物かと思っていたが、そういう勝手なイメージにヴォネガットが悩まされていたことも描かれている。芸術家肌で、ヴォネガットの合わせ鏡的存在であった二番目の妻ジルとの生活に疲れ果てて、一度は別れを決意しながらも結局はよりを戻してしまった真意はもっと掘り下げてほしかったところ。で、読んで思ったのは、ヴォネガットの生み出した作品のすばらしさはいささかも減じないということです。
2013/08/01
壱萬参仟縁
新刊棚より。書名のわりには、大部の本。カートは、文化人類学を「かぎりなく詩に近い科学」と考え、史学、心理学、芸術の多読を必要とした(121頁)。民俗社会、社会人類学なども出てくる。カートは、役に立つために、どうしたら作品が活字になるかを学生に教えたという(279頁)。カートが異議を唱えていたのは、資本主義がキリスト教的忠誠心を盾にして、金持ちが貧乏人に対して権力を持つことを正当化したことだ(421頁)。これは、ラスキンが他人を支配することを糾弾したことに似る。分厚い本で圧倒されるが、ポイントだけ拾った。
2013/07/29
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