kaze no tanbun 特別ではない一日
kaze no tanbun 特別ではない一日 / 感想・レビュー
アキ
今日わたしの過ごした一日は、わたしにとっては特別ではない一日。でも他人が経験すれば特別な一日。未来であれ過去であれ、幼児でも老年でも、日本でも海外でも、その人にとっての特別ではない一日を、19編の短文で過ごすことができる。ジャンルとしては様々なものを含んだものから成るが、「Yさんのこと」「北京の夏の離宮の春」「誕生」は余韻が残る好みの小品。
2019/11/14
mii22.
特別ではない一日とは何事もなかった日常で、きっと記憶にも残っていない思い出しもしないそんなある一日のこと。しかしそこにこそ自分の生きてきた足跡がしっかり残っているような気がする。これまで私の出会った人たち、経験してきた出来事は特別でない一日一日の積み重ねによって作られ今があるんだなぁ。そんなことを考えながらこの本の中を、ちょっと不穏で不安な気持ちになったり、懐かしい優しさに包まれたりしながら行ったり来たり。清々しい青空や風の匂いに心を踊らせる私にとっての特別ではないけれど穏やかな一日が今とてもいとおしい。
2020/05/07
とよぽん
高山羽根子さんの著書コーナーに展示されていた本の中で、表紙カバーの美しさに惹かれて。岸本佐知子さん「年金生活」が、深くて考えさせられる作品だった。他に「カメ」「日々と旅」「誕生」「昨日の肉は今日の豆」も良かった。
2021/01/08
アーちゃん
2019年発行。短編ではなくて短文集。装丁が美しく、目次が著者紹介とともに巻末にあり、凝ったレイアウト。17人の作家・翻訳家・漫画家・詩人(皆川博子さんに至っては”物語り紡ぎ”)の錚々たるメンバーだったが、全体的に淡々とした芥川賞的な感じなのでいくつか飛ばし読みをしてしまった。岸本佐知子「年金生活」、皆川博子「昨日の肉は今日の豆」が面白く印象的。どちらもディストピア世界の老人夫婦を描いているのが共通点か。
2024/03/27
よこたん
“棚に並んだひとつひとつ異なる色彩のパンを眺めるよりもまず先に、その空間のぜんたいに私は、土曜日、と思う。私にはそれだけでこと足りる。よろこびとか、幸福とかいう言葉が必要ない。土曜日と思うだけで、半ドンのお昼に一瞬で引き戻される。” 小さめの箱に隙間なく詰め合わされたクッキーのような、17人の短文。変わった形だったり、スパイスが効いていたり、逆に味がなかったり。懐かしい風味とともに、ほろほろと口の中で儚く消えたり。特別かどうかは、他人が決めるのではなく自分で決めたい、と思う。なんじゃこれ?と、癖になる。
2022/08/13
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