横溝正史エッセイコレクション1 探偵小説五十年 探偵小説昔話
横溝正史エッセイコレクション1 探偵小説五十年 探偵小説昔話 / 感想・レビュー
HANA
巨匠の随筆を集成したシリーズ一巻目。本書には『探偵小説五十年』『探偵小説昔話』の二本が収録されている。題名通り著者が老年になってから若かりし日の事を綴ったもので、ミステリに開眼した当時の事や新青年編集長時代の事、上諏訪の療養や岡山での疎開といった著者自身の思い出に加えて、乱歩や森下雨村、海野十三に小栗虫太郎らの探偵小説家の事が描かれている。特に乱歩の記述が大半を占め、著者の人生において以下に乱歩が大きい存在だったか窺える造りとなっている。著者の作品のみならず探偵小説を愛読する人にとっては必読の一冊だった。
2022/06/24
帽子を編みます
横溝正史ファンの私には、この本は滋味深いものでした。成功した作家が思い出を語る、当時の有名作家、江戸川乱歩、木々高太郎、海野十三、大下宇陀児、甲賀三郎…、探偵小説の黎明期の息吹の味わいも宜しいのですが、中学時代の探偵小説仲間の話、編集者時代、作家として歩み始めた経緯、いずれも味わい深いものでした。メモを取らなくては、と思いながらも文字を追うのがやめられません。更紗柄の装丁、貴重写真、連載時の似顔絵イラスト、あぁいいな、こんな本を手元に置いて何回も読み直したい。高価ですがそれだけの価値ある本でした。
2022/08/05
スターライト
今年生誕120年を迎える”最後の”探偵作家、横溝正史。これまで刊行されたエッセイ集を3冊に再編集。本書はタイトル通り、自らの作家生活を振り返り、探偵小説にのめりこむきっかけや江戸川乱歩の手にひかれるように、博文館に入社。短い編集者時代を経て探偵作家となってからの交流などを綴る。昭和8年の大喀血、上諏訪での療養、岡山での疎開などは繰り返し回想され、横溝の中で大きな位置を占めていたことが窺われる。生い立ちは複雑だったようだが、恵まれた人間関係と当然作家としての才能が開花していく様子が、よくわかる。
2022/06/21
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