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水の家族

水の家族

水の家族

作家
丸山健二
出版社
求龍堂
発売日
2006-06-01
ISBN
9784763006356
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水の家族 / 感想・レビュー

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Islay

かつての、特に短・中篇にみられた硬質で渇いた文体が駆使された、必ずしも何かが起こることが記されるのではなく、あるいは起こったことの説明が為される訳でもなく、それらが起こることの兆しや、ただならぬ気配を、その周辺で微細に、または圧倒的な情動で変化する明暗のその彩度や温度差や臭気や音量や音圧などといった緻密に書き込まれた外部によって、想像力を試され、刺激させられた無比なる魅力も今は昔。しかし、この作品には、思春期に愁える中学生時代の三浦しをんを心酔させ、勇気づけた小説の真髄、強くて美しい言葉たちが確かにある。

2016/04/26

メタボン

☆☆☆☆ 以前から気になっていたが「極北の作家」という印象があり、読めなかった丸山健二を初めて読んだ。ストーリーテリングで読ませるのではなく、大衆受けはしないだろうが、言葉の密度が濃密であり、文章を味わう愉楽がある。挿入される詩のような一行がとりわけ濃密で美しい。この挿入句が、読書の歩みを立ち止まらせ、より深く物語の世界観に浸らす効果がある。そして挿入句に挟まれた本文の長さ、まさしく水のように流れる文体のリズムが心地よい。不思議で暗い内容だが妹とその子供の存在に光が見える。塒という字も初めて知った。

2014/06/15

UK

散文詩のような表現に冒頭たちまち惹きこまれる。が、それが延々と続くと知って我に返り、たちまち飽きてしまった。なんだか川の淀みで同じ水がぐるぐるずっと回っているみたい。こんな小さな主題と範囲でよくこんだけ大量にお書きになられましたなあ。数ページの凝縮した詩にでもすれば印象的だったかもしれないね。初読みさんだけどもう近づかない気がする。

2017/08/22

ももたろう

濃厚で幸福な時間を過ごさせてもらった。死者の目から語られる主人公の家族は、皆それぞれに何らかの悲しみを裡に宿しながら生きている。物語の中で絶え間なく流れている水によって、家族それぞれの悲しみが人間単一のものではなくなり、自然にまで溶け出し、やがてまたそれぞれの生を肯定していくように感じた。水には悲しみも喜びも全てを肯定する美しさを感じた。さらさらと流れゆく水の美しさと人間の悲しみが完璧に融和し、透徹された世界観を感じる素晴らしい物語だった。

2015/10/05

うえうえ

文章がさりげなく美しい。水の家族という字面の美しさ。暗い水底に沈む弟、殺人を犯す祖父、家に縛られた長男、病気のふりをする母親、自立した妹、そして無様に死んだ自分…… ぐるぐる回る水車…… ストーリーというより文章の力で読ませる。

2019/02/28

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