星を運ぶ舟
星を運ぶ舟 / 感想・レビュー
アキ
小川洋子の小説「猫を抱いて象と泳ぐ」の表紙に、リトル・アリョーヒンという少年の人形を作った前田昌良の作品集。まるで少年が作った雑貨のような素朴な小物に、彼の絵画を背景にした世界が、小川洋子の小説のように内向きで閉じた感じがする。『星座を描く少年』という文を小川洋子が巻頭に書いている。彼女の小説は、まるで星座のように、ばらばらに散らばっていたはずのそれらがようやく正しい場所を探し当てたかのごとく、肩を寄せ合っているようである。彼女にもどうしてこの小説を書くことになったのか、いつも説明できないと言いつつ。
2022/09/03
風眠
どこか牧歌的で、ノスタルジックで、でもスタイリッシュで、ちょっと怖い感じ。なんだろう?なんて表現したらいいんだろう?次の瞬間には最悪な何かが起こってしまう、その手前の瞬間、とでも表現すればいいのか。絵画と動くおもちゃで表現される前田昌良さんの世界観は、じっと見つめていると胸騒ぎがしてくるような落ち着かない感じがする。アートに関してはまったくの素人なので、見当違いな事を言っているのかもしれないけれど、彼の世界観と、小川洋子さんの世界観は、とても似ていると感じた。「星の生まれる積み木」が星空泥棒みたいで好き。
2019/12/24
新田新一
作者は、小川洋子さんの作品『猫を抱いて像と泳ぐ』の表紙のデザインを担当した人です。巻頭に小川さんの短編が載っており、その後は作者の作品が紹介されています。小川さんの小説は短いながらも魅力的で、細やかなものに愛情を注ぐこの作家の感性が滲み出たもの。作者の作品につけられた解説は詩のようでもあり、短編のようであって想像力を刺激します。作者の絵やオブジェは不思議な雰囲気を持っており、読み手を幻想の世界に誘います。文学と美術の二つの世界の精髄を味わえるお勧めの一冊です。
2024/11/17
二藍
小川洋子さんの『猫を抱いて象と泳ぐ』の表紙を飾った作品の作家さん。プロローグは小川洋子さんが短いお話を寄せています。『まだ魔法の解けていない男』と自らを称する前田さんの作品は、どれも玩具のように素朴で、棘がない。さびしさやかなしみや、そんな痛みを内包していながら、そっとほほえんで、どこかへすこしずつ歩みを進めている。『楽しいけど悲しい』というオルゴール、『マンテーニャの天使』のやわらかそうな肌、そして『リトル・アリョーヒン』の毅然とした立ち姿。彼らのまなざしは心地いい。
2014/11/17
さく
表紙に一目惚れしました。もちろん中身も素敵でした。小川洋子さんのプロローグから始まり、前田昌良さんの作品の写真と文書が載っていて、まるで個展に来たみたいです。星の形が隠れた積み木がお気に入りです。夜空の星は寂しい時には思い出すもの。
2015/04/01
感想・レビューをもっと見る