ショスタコーヴィチとスターリン
ショスタコーヴィチとスターリン / 感想・レビュー
syaori
「スポンサーとなりうるのは、国家だけ」という体制の中、ショスタコーヴィチが独裁者とどう「格闘」し創作活動上の信念を守ろうとしたかを辿る本。独裁者スターリンは「文化とその創造者たち」への敬意を持ち、しかし政治的な利害のためにはそれを無視できる人物で、そのためショスタコも難しい立場から作品を発表してゆくことになりますが、その中で彼が「個人的な体験を普遍的な体験に変え」その内面を音楽の中に秘めたかが、作品と生涯を通して語られます。彼の作品から感じる叙事性と悲壮な良心の出所について様々に示唆をもらえる本でした。
2022/07/22
BLACK無糖好き
ショスタコーヴィチの名前は、封鎖下のレニングラードの伝説の演奏会に纏わる文脈でよく目にする、先日テレビで交響曲第七番を、スターリンとルーズベルトがいかに政治的に利用したかを放映していたのに触発され本書を手に取る。この作曲家の生涯をスターリンとの対峙(抵抗と服従)を軸に、その内面に迫りながら描いている。この困難な時代に文化人が個々の作品と、政治イデオロギーに折り合いをつける術は命がけでもある。その緊迫感が、自分自身ソビエト時代の文化にあまり馴染みがないにも関わらず、本書を興味深く読めた要因。
2019/01/24
どら猫さとっち
スターリンの独裁政権下、作曲家ショスタコーヴィチはどのように作品を生み出し、生きていったか。20世紀の音楽史のなかで、最も過酷な時代を生きた作曲家を追った評伝。ショスタコーヴィチは好きでよく聴いているが、スターリンの弾圧や抑圧に屈せず、従順ながら反逆の芽を出していった。コミカルでシニカル、そして暗さや重さを織り込んだ音楽から社会や人生を垣間見える世界がある。ショスタコーヴィチについて知りたい人におすすめしたい。
2019/05/26
NyanNyanShinji
著者はソロモン・ヴォルコフ。ショスタコーヴィチ好きならピンとくるだろう。いわゆる偽書とされた『ショスタコーヴィチの証言』の作者である。その『証言』から四半世紀を経てつづられた本書はそのタイトルのショスタコーヴィチとスターリンとの関係を超えて、ソヴィエト連邦建国からショスタコーヴィチの死去までの時期の同国の文化史をもカバーする。それは勿論当時の皇帝スターリンの文化政策により血塗られた文化史ではあるけども。その文化史を通していかにショスタコーヴィチが創作活動を行ったかのレポートは壮絶なものだった。汚名返上だ!
2024/03/31
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