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千代田区一番一号のラビリンス

千代田区一番一号のラビリンス

千代田区一番一号のラビリンス

作家
森達也
出版社
現代書館
発売日
2022-03-29
ISBN
9784768459133
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千代田区一番一号のラビリンス / 感想・レビュー

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trazom

夫婦の会話からこの小説は始まる。明仁と美智子と呼び捨てにされた二人の名前を見て、えらいものを読み始めたと緊張する。決して天皇制を揶揄する作品ではない。上皇・上皇后陛下と一緒に、「象徴とは何か」「歴史とは何か」「穢れとは何か」を悩む。本書は、天皇制を問うというより、皇室報道に対して徒に神経質である社会やマスコミの「皇室タブー」に一石を投じている。ドキュメンタリーの旗手・森達也さんが描くこのフィクションは確かに問題作である。多くのメディアが本書を黙殺していることが、この作品が持つ地雷の恐ろしさを物語っている。

2022/06/16

ケンイチミズバ

実はNGではないこともそれをNGだと思う人が増えたからNGになる風潮がある。こんな会話がお二人の間で交わされているのかもしれない。そう考えるとどうだろう。「頼み事が書かれていてあなたがそのとおりにしたら、政治利用ということになるのかしら。」「だってその場合、それは私の意思だよ。」「そうよね。利用するとかしないとか、私の夫は国民や政治家たちの道具のようね。失礼しちゃう。ちゃんと意思がある人間よ。」私たちへの問いが投げかけられたアキヒトとミチコの会話はフィクションでありこれすらも不敬とする人たちもいるだろう。

2022/04/04

アナーキー靴下

空洞化する天皇への思いを映像化しようとするライターが主人公のドキュメンタリー風フィクション。もしくはファンタジーを纏いフィクションを装ったドキュメンタリーなのかもしれない。世の中の良質なドキュメンタリーは、総じて日常の中で見落としていた問題意識に気付かせる、覚えたての言葉を使うなら「異化」させることを目的としているのではないだろうか。掴みが秀逸で、前半は刺激に満ちているのだが、後半は有耶無耶だったり、よくわからなかったりする。でもそれで良いのだろう。「息づく」ということは、自分の中に抱えることなのだから。

2023/06/28

楽駿@新潮部

川崎図書館本。天皇制のありかたが、明治時代に大きく変わり、また、第二次世界大戦の敗戦で、改めて大きく変わった。天皇が現人神から、ただ人に変わったと、宣言がありながら、象徴であると決まった。政治に介入してはいけない。けれど、ご自分の意思も当然、お持ちであろうし、誰も傷つけないよう、けれど、少しでも民が良くなるよう、その公務のありかたは、なんて過酷なんだろう。どこまでがフィクションで、どこからがノンフィクションなのか、あえて、微妙に描かれているのかも。国民が大人になり、本当の声が届く日は来るのだろうか?

2022/08/23

梅干を食べながら散歩をするのが好き「寝物語」

▼皇室タブーに挑む本と紹介されており、興味深く読んだ。「カタシロ」という名前の、架空の生き物が登場する。その点からもファンタジーだと思って読むべきだ。▼明仁と美智子のやりとりは「いかにもありそうなことだ」と感じた。山本太郎など有名人が実名で登場する。本人の許可は得ているのだろうか。▼文中で、天皇の発言として「退位」という言葉が出てくる。でも実際には本人は「譲位」という表現を用いていたので、後者を用いたほうがリアルだろう。▼ハラハラする物語であったが、「カタシロ」が象徴するものが何なのかは理解できなかった。

2022/05/24

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